ユリウスさまはエリクさまのそのお言葉を聞くと、さっと胸の前に手を当ててお辞儀して、私たちとすれ違って歩いて行かれました。

「リーディア。よかったら少し部屋で話をしないか?」
「そんな、お忙しいのによろしいのですか?」
「いいんだ、リーディアと久々に話がしたくてね。いいかい?」

 懇願する幼子のような表情を浮かべられれば、わたくしが断ることなんてできましょうか。
 お言葉に甘えてわたくしはエリクさまと共に部屋へと向かいました。

 わたくしは両親を失くしたこともあり、王妃さまのご厚意で王宮に住まわせていただいております。
 そのわたくしの部屋に到着すると、二人でソファに腰をかけてお話を始めました。
 すると、隣に座ったエリクさまが両の手のひらに乗るほどの木箱をわたくしにお渡しになったのです。

「エリクさま、これは?」
「異国の渡来品でね、オルゴールというらしいんだ。このねじを巻くと音が鳴る」

 そう言ってネジを巻くと、箱から何とも言えない高く綺麗な音が鳴り響きます。
 わたくしはその音色をもっと聴きたくなって木箱に耳を近づけると、心地よいリズムを奏でてくれます。