その声にエリク様はゆっくりと顔を上げて私を見る。

「婚約した数日後、私の両親のお墓に行ったことを覚えていますか?」
「ああ、君の両親に君を幸せにすると誓わせてもらった」
「そうですね、あのとき両親の好きだったひまわりをお墓に備えてくださってありがとうございました。両親が好きなことを覚えてくださっていて嬉しかったですわ」
「ああ、忘れるわけない。君の大切な家族のことだからな」
「ええ、そうですわね。ありがとうございます」

 お茶会は幕を閉じ、私は自室でメモ用紙にさらさらと文字を記すとそのまま書庫室へと向かった。
 私はあらかじめ決められていたある本の27ページ目にその紙を挟むと、書庫室長へ合図をして去る。


『第一王子エリク・ル・スタリーは記憶改ざんの共犯者です』


 私はリアにディナーはいらないと告げると、そっと月明かりが入り込む窓に座って頬杖をついた──





【ちょっと一言コーナー】
オレンジフレーバーティーですが、
このオレンジは王宮の庭で採れた新鮮なものです!
なのでとても美味しいと貴族たちの間で評判です。