「いいえ、エリク様のお召し物からですわ」
「──っ!」

 私は冷たい目でエリク様をじっと見つめると目をきょろきょろと泳がせた後、テーブルに額をつける勢いで謝り始めた。

「すまないっ! 彼女とはまだ二度しか会ってない! 遊びのつもりだ。許してくれっ!」

 急に謝り、勝手に浮気を白状し出したところでこの人の器と頭のレベルが知れている。

「君が一番なんだ。聖女の清らかさを持った君こそが私に相応しく、そして美しい」

 その言葉からは「聖女」という私しか見ていないことが開け透けて見えており、私は呆れてものも言えなかった。
 結局この人も私自身を愛そうとはしていなくて、母親の王妃の言いなりで「聖女」の私を利用しているのね。

 エリク様が最近男爵家の美しい令嬢に身を焦がしているのをじいじが調べてユリウス様伝いに聞いていたけれど、やはり本当だったのね。
 ストロベリーの香りが好きと情報を仕入れてカマをかけてみたけど、まあ浮気していたんでしょうね。
 記憶を思い出した以上心から彼を愛してはいないけれど、それでも裏切られたという気持ちはあって胸が痛む。

「エリク様。顔をあげてくださいませ」