「あの時エリク様がお気に召された多肉植物が私も気に入ってしまい、調べてしまいましたわ」
「あ、ああ……あの植物園だね。もう一度行けるように母上に相談してみるよ」
「ええ、よろしくお願いします」

 私はこの世界で実際に生きた一年の間でも、さらに架空の18年の記憶の中でも植物園なんて一度も行ったことがない。
 適当に嘘をついた? それともやはりエリク様も記憶の改ざんに関わっている?

 私はフレーバーティーを一口飲むと、エリク様の額に汗がにじんでいるのがわかった。
 よく思い出せば、婚約者なのにこの一年でエリク様とデートをしたのは5回ほど。
 それにおかしい点はいくつもある。
 公務と言いながら出て行く時間が極端に遅い時間だったり、朝王宮に戻ったりしているのを何度も見かけた。
 服装は貴族らしい綺麗な身なりの時もあれば、ある日は庶民のような格好をしたのを目にしたこともある。

 典型的な浮気の気配が漂っており、私はそこから切り崩せないかと思案して次の質問をする。

「エリク様、今日は甘いストロベリーの香りがいたしますわね」
「フレーバーティーだからかな?」