目を開けたら桜が待っていた──
 少しだけ違和感を感じでその木を見ると、先程までいた桜の木よりも花が開いている。
 それに、一緒にいたお母さんはそこにいなかった。

 『戻ってきた』

 そう感じた時に、後ろから声をかけられた。

「ユリエ」

 振り返った先には、私がずっとずっと会いたかった彼がいた。
 シルバーの髪がやわらかく揺れて、サクラの花びらが舞い散っている景色によく似合う。
 私を見つめるその綺麗な瞳は、大きく見開かれた。

 そうして私はぎゅっと彼の胸の中に閉じ込められた。
 私は手を彼の背中に回して、彼の存在を確かめる。

「ユリエ……会いたかった」

 何度も聞いたその言葉は、声色からもう会えないことを覚悟していたのだと感じる。
 吐息が漏れて、何度も私のことを呼ぶ。

「母に会ってきました」
「そうか、お元気にしていたか?」

 お母さんの笑顔と声を思い出して、また泣きそうになる。
 それでも前を向くと決めた。
 私は、自分で歩いていくと決めた。
 だから……。

「ユリウス様、私はあなたが好きです。一番好きです」
「──っ!」