それなのに、私を一人で育ててくれて、毎日明るく接してくれて……。

 ごめんなさい、お母さんの悲しみに気づいてあげられなくて。
 ごめんなさい、何も助けてあげられなくて。

「友里恵」
「なに?」
「これ……」

 お母さんから差し出されたのは、私が持っていた帰還用の小瓶と同じような瓶。

「これ、あなたにあげる」
「え……でも……」

 聞けばいつでも異世界に戻ってきていいからと渡された薬らしい。
 実は私の薬は帰還用の分は効果があまりわからなかった。
 日記にも書いていなかったし、文献にも載ってなかったそう。
 だからこそ、私は異世界にもう戻れないかもという気持ちで現代に戻ってきた。

 でも今私の手の中には帰還用の薬がある。
 じっとその瓶を見つめていると、お母さんは私の頭を撫でた。

「行きなさい」
「え?」
「あなたは向こうに大事な人がいる。そうじゃない?」

 そういわれてお母さんにはやっぱり敵わないな、と思った。
 なんでもわかっちゃうし、私の事も一番に考えてくれてるからこそ理解してくれてる。

 私はユリウス様の声を思い出して、涙が出てくる。