あれから周りに気を巡らせて観察していると、私は「なぜか」行ったことがない場所がいくつか存在していることに気づき、その一つである王宮書庫室へと向かった。

「おや、あなた様がいらっしゃるのは珍しい」
「少し調べたいものがありまして」
「元王妃様の代から仕えているこのような私のところにいらっしゃるなど王妃様に叱られますよ」

(元王妃様……? ──っ! なるほど、今の王妃様はいわゆる後妻か。つまり、このような口ぶりをすると、王妃様にあまりいい感情を持っていない。それにもう一つわかった。この王宮には派閥がある。王妃様側と元王妃様側の人間)

 私はしばらく考え込んでしまったようで、目の前にいる書庫室の管理人のような人物に心配された。

「大丈夫ですか? 具合でもよろしくないのでしょうか?」
「いえ、少しめまいがしただけです」
「それは大変だ、こちらにお座りくださいっ!」

 そう言って管理人は私に椅子に座るよう促す。
 少し落ち着いたふりをして目の前にいる管理人にいくつか質問をしてみることにした。

「あなた様はこちらの書庫室に来て長いのですか?」