きっと私に気を遣ってゆっくりしていていい、ということなんだと思うけど、なんとなく違和感を覚えた。

 現代に戻ってきてからお母さんの優しさをすごく感じていた。
 最初はああ、懐かしい、お母さんの優しさが沁みるな、なんて呑気に思っていたけど、よくよく考えるとなんだかその優しさが私の知っている昔よりも過剰に思えた。
 どうしてそんな風に感じたのか、優しさが過剰なのか。
 ぼうっと考えながらテレビに映る小さい天気予報に目を移す。

「晴れだってさ」
「そう、よかった。あ、お母さん着替えて来るわ!」
「あ、じゃあ、私も!」

 そう言ってお互いの部屋に着替えに向かった──


 河川敷の桜をお母さんといつも見に行っていたため、今日もてっきりそこだろうと思っていたが、そうじゃなかった。
 神社の近くの裏道を抜けた先の丘に、ポツンと一つだけ桜の木があった。
 今年は寒いからまだどこもあまり開花していないとテレビで流れていたのを思い出したが、そこの桜はもう咲き始めている。

「お母さん、ここ……」
「ふふ、お母さんの秘密の場所」

 そういってシートをひくと、隣においでというように手招きする。