「それは責任転嫁だな、内乱を起こしたのはあくまでそなたら王族だ。私の知ったことではない!」

 クリシュト国への侵攻意思を認めたが、罪は認めない。
 その姿を見たレオは一歩前に出て静かに呟いた。

「もう、おやめください。母上」
「……」
「父上も母上も、贄儀式にこだわるあまり、他国に侵略、そして逆らうものは断罪していきました」
「それがどうした」
「国民は皆疲弊しております。以前のお優しい父上と母上に戻ってほしいと願っております。どうか、私も力を尽くしますから、これ以上罪を重ねてまで国を守ろうと、繁栄を取り戻そうとするのはおやめください」

 王妃はその言葉に眉を少し動くと、扇を降ろしてレオの目を見つめ返した。

「魔法のないコーデリアなど、どんな価値があろうか」
「いいえ、魔法がなくとも。魔法が消えても、国民がいる限り、そして国民を思う王族がいる限り大丈夫です」
「レオ……」

 ユリウス様の手が私の手を強く握りしめている。
 彼もまた静かに同じ王族の立場の者として耳を傾けていた。

「無理だ……」
「え?」
「もう贄儀式は発動してしまっている。止められぬ」