「──っ!」

 私はユリウス様の腕の中から王妃に向かって叫んだ。

「レオは、レオ様は妹さんを傷つけたことを悔いてる。だから呪いを解こうと必死になって、その方法を探ってなんとかしようとしてる! 罪人なんかじゃない!!」
「黙りなさい! この汚らわしい裏切者!! 聖女なんて、裏切者だわ」
「母上、ユリエは裏切者でもない。攫われた身でもこのコーデリアに尽くしてくれようとした!」
「ふん、100年前の聖女と同じよ。召喚された国を裏切って別の国でのうのうと生きようとしてるのよ」

 100年前の聖女──
 彼女は確か日記によればこのコーデリア国で召喚されて、その後クリシュト国に行った。
 王妃はそれを裏切といっているのだろう。
 実際に聖女を迎えたクリシュト国は繁栄をしたのだから……。

「コーデリア国の王妃よ、あなたは魔術師を送り込み、我が国の内乱を扇動して侵攻しようとした」
「ああ、そうだ。お前も兄が邪魔だったのだろう? よかったではないか」
「違う! 兄と私は確かに腹違いであり憎まれていたであろう。だが、あなたが扇動しなければ、兄と義母は追放されずに済んだ」