もう一度起き上がろうと身体を動かすが、なぜか動かない。

「んー!! なんでっ!」
「ふん、第一級魔術師の魔法陣から逃れられるわけないでしょ? 役立たずで能無しの聖女なんだから」
「能無し……」

 苛立ちよりも先に図星を突かれたことのぐうの音も出ない悔しさが心に広がる。
 確かに、そうだ。
 私は何もできない、何の力を持った人間かもわからない。

 私は聖女じゃないんじゃないの?

 思わずそう思いたくなるほどの無能さで、聖女がもっている何かしらの力も発現できない。

「聖女はね、元々闇の力に対抗するための道具。国を裏切った……このコーデリア王族を裏切った闇の魔術師に対抗するため」
「闇の魔術師……」
「この国に聖女はいない。だから、異世界から召喚することにした。強い力、穢れを払う力を持った聖女を……」

 そこまで聞いて地下室で見た本の中に巫女服が描かれていたことを思い出す。
 もしかして、巫女を聖女として召喚していたとしたら……。
 日本の人間がこの世界に召喚されたことも納得がいく。

 そんなことを考えていると、ふと身体の力が抜けて思考がぼんやりとしてくる感覚に襲われる。