怒っているような、何かにいらついているそんな表情。

「楽しかったか? 好いた男との逢瀬は」
「──っ!!」

 ユリウス様とのこと、知ってたんだ。
 私は何も言えなくなって唇を噛んで彼を見上げる。

「俺はお前の婚約者だ」
「なったつもりはないわ」

 なんとか言い返すけど、私の身体は小刻みに震えている。
 もうっ! 止まりなさいよ、私の身体!!

「…………」
「…………」

 レオはじっと私を見つめて、そして私からさっと退くと、隣に座って頭を抱えた。

「レオ様?」

 なんか様子が変で、今度はさっきまでの怖い雰囲気はなくなった。

「好きだ」
「え?」
「お前が好きだ、好きになった。最初はからかおうとしただけだった。だけど、お前と過ごす日々が楽しくなった。お前と話すことが嬉しくなった。お前に触れたくなった」
「どうして、私なの……」

 レオは頭をぐしゃぐしゃっとかくと、顔を逸らして話を続けた。

「そんなもんわかるか! 好きなもんは好きになった、それだけだ」

 なんて正直……! でも、なんて……。

「素直……」
「うるさい」
「ふふ」