王都を追放されてから、寝ずに何日も走ってた私は、気付けばボースハイト王国と戦争中のアルプトラウム帝国内に入ってたみたい。

「ほええぇぇ!? ここアルプトラウム帝国内なの!?」

「そうだよ。ヒメナは王国民ってことだよね?」

 だからさっきポワンは真顔になったんだ!!
 二人は帝国民で王国と戦争中だから……私殺されちゃう!?

「……うん。ボースハイト王国のアンファングって街の孤児院にいたんだけど……戦争で、右手と一緒に無くなっちゃった……」

 帝国の四帝の一人のアッシュのせいで……。
 そう言いたかったけど、帝国民の人がどう受け取るかが分からないから、迂闊なことは言えないや……。

「帝国軍がアンファングを堕としたのは半年前じゃなかったかの? それまでお主はどうしてたのじゃ?」

「王都で盗みとかして、皆で生きてた……」

「皆? でもヒメナは一人だよね?」

「皆は王都に残って……私は王都を追放されたんだ……」

 私はポワンとルグレに王都での出来事を話した。
 アリアや皆のこと。
 それにロランとあったこと。

 二人は帝国民みたいだから、帝国を悪く思っていない風に伝えるためにも慎重に。

「……そんな目に……!?」

 私の話を聞いて、ルグレは凄く驚いていた。
 確かに、よくよく考えれば凄い目にあってるもん。
 驚いても無理ないや。

「……くそっ……王国騎士団がそんなことをしたのは、帝国が追い詰めているからだ……やっぱり王国と戦争なんてするべきじゃなかったんだ!! 俺が――」

「ルグレ!!」

 私の話を聞いて、何でか自問自答をし始めたルグレを制すように怒鳴るポワン。
 二人共……どうしちゃったんだろう?

「だから駄目なのじゃよ、お主は」

 ポワンの殺気にも近い怒気。
 山の中の鳥が鳴きながら飛び、私とルグレは思わずたじろいでしまう。

 ルグレはポワンに怒られてへこんじゃった。
 何で怒ったのか良く分からないけど、そんなに怒らなくたっていいのに。

「――して、小娘」

 ……ん?
 いや、小娘ってまさか私のこと!?

「私はヒメナって名前があるし、ポワンだって小娘じゃんか!!」

「阿呆! ワシは生き過ぎて自分の年齢なんぞ覚えとらんが、数百歳は超えとるわ!!」

 なーに言ってんだか、多分ちょっと年上くらいの年齢じゃん。
 嘘も大概にして欲しいよ。

「して、お主はこれからどうする気なのじゃ?」

「どうするも何も……」

 孤児院からも王都からも追い出されて、行く当てなんかないもん……私には。

「よし、なら弟子になれ!!」

「ほぇ?」
「え!?」

 私が間の抜けた声を出したと同時に、へこんでたルグレが驚き、顔を上げる。
 弟子になれって……どういうこと?

「お主は己の身すらも守れず、ただただ壊されて、奪われてばかりで悔しくないのか? このままじゃお主は奪われてばかりじゃぞ、何一つ守れずの」

 確かに……ポワンの言う通りだ。

 アッシュやカニバル、ロラン程の強い人間に狙われたことはきっと不幸なんだろうけど、私は自分の身すら守れなかった。
 エミリー先生も、ララも、メラニーのことも……。

「……アリア……」

 そしてアリアのことも守れず、アリアは両目を失ってしまった。
 私が弱いせいで。

 なのに私は、アリアに王都から追放されて、自暴自棄みたいになって……。

「言うてみよ、小娘!! お主はどうしたいのじゃ!?」

 今のままじゃ駄目だ。
 アリアの側にいても、アリアを守ることなんてできやしない。

 欲しい――力が。
 自分の想いや、皆を守るための力が。

『強くなれ、ヒメナ。アリアだけは何に代えても守るんだ』

 エミリー先生にそう言われたからじゃない。
 私は――。


「私は、強くなってアリアを守りたい!!」


 私がアリアを守りたいんだ!!
 アリアに足手纏いって思われないくらい強くなって、アリアの元に戻ってやる!!


「だから私を、弟子にして下さい!!」

 私は全力で頭を下げてお願いをした。

「「えぇ!?」」

 ――ルグレに対して。

 ルグレは強いし優しそうだから、私の理想像だ。
 私はルグレみたいになりたい。

「阿呆! お主はワシの弟子になるのじゃーっ!!」

 そういえばポワンがルグレの師匠だったんだ。
 忘れてたや。
 てへっ。