「好きな気持ちは疑わないでほしいなー」
「遊園地で遊んだから? 付き合ってるフリをし始めたから?」
「まぁ、それもあるよ」
それもある。言葉の意味がわからなくて、繋いだ手を強く握り返す。両思いのキセキを噛み締めるのには、ファンの方がまだ大きい。
「ちゃんと、好きだよミチルのこと」
「嘘じゃないのは、わかってる」
「うん、伝わってれば良い。俺はいつだってミチルの言葉を待つし、ミチルには素直に伝えるから」
あまりにも優しい瞳にクラクラして、本当だと実感してしまう。
私はひろくんみたいになりたくて、それでいて、ひろくんが大好きだ。
「私もいつか、ひろくんみたいになれたら。誰かを助けられるかな?」
「なれるんじゃない?」
いつものズルイ笑顔で、繋いでる手と反対の手で私の頭をぽんぽんと撫でる。いつのまにか遠慮がなくなってきたボディタッチに、つい心がトロトロと溶けちゃう。
「あ、でも」
「なに?」
「思ってるより俺はずるいよ」
「ずるいとは思ってるよ、だって、私ばっかり優しさをもらってどんどん好きになってく」
一度口にしてしまえば、素直に言葉にできるようになっていた。いつだって、私がどうしたいか。ひろくんが、会話の途中でだって、つい詰まってしまう私の思いを聞くために待っててくれたから。
「そういうことじゃなくて」
「どういうこと?」
「俺が優しくするのは打算的だってこと」
「打算的って何が?」
ぐいっとひろくんが私の腕を引っ張って、急に抱きしめてられる。暖かい腕の中で、おとなしくしていれば、ひろくんが続ける。
「嘘だったから」
「優しさが?」
「優しさは本当」
「じゃあ何」
「あの日、好きな人いないって言ったこと。俺ずっと、ミチルのことが好きだったし。ミチルをどうやって振り向かそうかなぁって考えながら夢の中に遊びに行ってたんだよ?」
好きだと鳴った胸を押さえながら、ひろくんを見ようと顔を上げる。すかさず、ひろくんの腕に頭を押さえられて邪魔されてしまう。それでも隙間から見えた耳は真っ赤に染め上げられていて、表情が見えなくても、今、ひろくんがどんな思いかわかってしまった。
「明日のデート何したいか、考えといて」
誤魔化すようにぶっきらぼうに告げるから、もう答えは決まっていた。
「ひろくんのしたいこと」
「なんだよ、それ」
「なんだか、ひろくんに付き合いたい気分なの!」
今まで、私の好きなことばかり付き合ってくれていたのは、こういう気持ちだったのかな。胸の中が暖かくて、愛しいでいっぱいだ。
<了>