自分に自信がない。だから、周りの人に合わせて笑って、周りの人に合わせて答えを選ぶ。そんな日々を繰り返してきた。好きな人は? と問われれば「えーいないよ」と答えながら反応を窺う。
いつだってみんなは人気の相田くんの名前を出していた。だから、ふぅんと思いながらも、そうだね、っと相槌を打っていた。私も嫌いじゃないよ、って、嘘でも、本当でもない言葉をそれっぽく呟いた。
だから、まさか、そんな相田くんに告白されるだなんて思ってもいなくて。
目の前で、恥ずかしそうに微笑んでる相田くんから視線を外す。急にSNSにメッセージが来て呼び出されたかと思えば、告白だった。でも、そんな予感は少しだけあった。だって、やけに目が合うし、やけにメッセージが送られてくる。
でも、私が相田くんを嫌いじゃないと言ったのは嘘、ではないけど、恋心ではなくて。みんなが好きな人を上げる中で相田くんの名前ばかり上がるから、私も相槌を打っていただけ。友達としては優しいし、いい人だし、好きだよ。好きなんだけど……
「ダメかな? 心石さんも俺のことを好きって聞いたんだけど」
「ごめんなさい、私は答えられないです」
「俺のこと嫌いってこと?」
「嫌い、じゃないけど」
「じゃあ好きな人がいるの?」
「いないけど」
だからと言って、相田くんからの告白に舞い上がって頷こうものなら、私は友達を一斉に失うだろう。私の今まで築き上げてきた友情なんて、そんな脆いもの。でも、ここで心の中の言葉を口にするわけにもいかない。
「じゃあ、保留にして!」
「相田くんはなんで私なんか」
「心石さん、いつもニコニコして話聞いてくれるから嬉しくて」
いつもニコニコしてる子なんて、相田くんの周りに五十人は居るでしょ。昨日までの私だったら、ツッコめたはずの言葉が、うまく口から出ていかない。早くこの場を切り抜けたい。額から汗はダラダラ溢れているし、心臓がきゅうっと縮んでいたいくらいだし。
「まだ、断らないで。好きな人がいないなら」
「わかった」
そのまま、相田くんは切なそうな顔をして去っていった。のに、いつのまにか私が相田くんに告白された噂は広まっていて、教室で私は針に突き刺されている。