「運命の人!」
 ささやきを噛み締めながら、陽子はもう一度静かに腰を下ろした。不思議な体験のあと、ふと空を仰ぎ見たとき、風に揺らめく大輪のヒマワリが陽子を見下ろしていた。その向こうには八月の焼けつく西日が明々と目の前の世界を映し出した。今しがた聞いたささやき声に思わず涙ぐむと同時に、背後に気配がした。
「誕生日おめでとう」
 首にかけられたものを指で触れた瞬間、脳裏にこれまでの人生が蘇る。魂が辿って来た歴史がまざまざと映し出された。現世はその一部分に過ぎなかった。自分でもどう捉えたらいいかわからない。俄かには信じ難いが、そう感じずにはいられなかった。彼と自分はつながっていて、いつでも一緒なのだ。陽子は悟った。彼は永遠の伴侶なのだと。

        *

 我に返り、金色のペンダントを掌に載せ、見つめるうちにその形に見覚えがあることに気づいた。陽子はハッとして立ち上がり、咄嗟に彼の手を取った。
「ねえ、一緒に来て!」
 強引に彼を引っ張って陽子はその場所へ急いだ。