「返歌よ!」
 彼女が悲鳴のように叫んだ。
 私は、想いを詩に託し、短冊にしたためたていたのだ。これは、まさしくそれに対する“返歌”であった。
 誰かが私の頬を軽く(はた)いた。我に返った私は、彼女のほうを向いた。と、彼女は突然、嗚咽した。そして、私を抱きしめる。
「さあ、急いで!」
 彼女は短冊を笹から外すと、私の手に握らせてくれた。
 私はまだ震えが止まらない。彼女は顔をクシャクシャにしながら、そんな私の尻を思いっ切り引っぱたいてくれた。
「うん、行くよ!」
 全てを悟った私は大きく深呼吸をした。
 もう一度彼女の友情の(むち)が私の臀部を叱咤激励した。その反射で私の動物的神経は目覚める。
「行けー!」
 温かな号令に押し出され、私の足は大地を蹴っ飛ばした。