参道を抜け、大鳥居をくぐってしばらく行くと横断歩道に差しかかった。赤信号で足を止められ、前の若いカップルに目が行った。私服だが、たぶん 高校生だ。まだまだ初々しい二人だ。私たちは思わず顔を見合わせ笑みを交換した。微笑ましい二人に私の妄想が膨らむ。
──自分もいつか素敵な人と……
私は彦星様の面影を浮かべながらじっと二人の背を見つめた。
──きっと彼は素敵な男性に成長しているに違いない……
──もう一度だけ、めぐり逢えたなら……
──今度こそ、思いの丈を……
私の妄想は激しく胸を揺さ振り続けた。無論、“アルプス乙女”の奥深くだが。
信号が変わった。
私たちは同時に一歩を踏み出すとゆっくりと前進した。
横断歩道の真ん中で男性と擦れ違った。擦れ違い様、一瞬その男性がこちらに顔を向けた気がして、ほとんど反射的に男性の顔を見上げた。と、男性は視線を逸らし、そのまま遠ざかって行った。振り返ってその後姿をチラと見る。
渡り切った所で立ち止まり、もう一度振り返って目で背を追いかける。鳥居をくぐった男性はすぐに人込みに紛れ、もう見つけることはできない。
先を行っていた彼女は引き返して私の顔を覗く。
「何でもないの……」
何か大切なものを忘れたかのように胸辺りがざわめいたが、それを断ち切るようにクルリと回り、足を運ぶ。
──自分もいつか素敵な人と……
私は彦星様の面影を浮かべながらじっと二人の背を見つめた。
──きっと彼は素敵な男性に成長しているに違いない……
──もう一度だけ、めぐり逢えたなら……
──今度こそ、思いの丈を……
私の妄想は激しく胸を揺さ振り続けた。無論、“アルプス乙女”の奥深くだが。
信号が変わった。
私たちは同時に一歩を踏み出すとゆっくりと前進した。
横断歩道の真ん中で男性と擦れ違った。擦れ違い様、一瞬その男性がこちらに顔を向けた気がして、ほとんど反射的に男性の顔を見上げた。と、男性は視線を逸らし、そのまま遠ざかって行った。振り返ってその後姿をチラと見る。
渡り切った所で立ち止まり、もう一度振り返って目で背を追いかける。鳥居をくぐった男性はすぐに人込みに紛れ、もう見つけることはできない。
先を行っていた彼女は引き返して私の顔を覗く。
「何でもないの……」
何か大切なものを忘れたかのように胸辺りがざわめいたが、それを断ち切るようにクルリと回り、足を運ぶ。