私の耳元を夜風が吹き抜ける。




こちらに向かって来る5つの影を捉えながら、今ではもう習慣となった動作を繰り出した。




相手の鳩尾に我ながら見事な蹴りを入れると、「あ゛ぁ゛っ゛」という唸り声と共に人が倒れる音が聞こえる。




この街に相応しいBGMだ。




だが、今回の相手は一筋縄ではいかないらしい。




「くっ、し、雫月っサラぁっ。噂に聞くより強いじゃねぇかぁっ、、」




今では殆ど必要がなくなったその名前が呼ばれて。




あぁ、そんな名前だった気もするなぁ。




ワンテンポ遅れて自分の名前だと認識する。




やっと我に帰った私の目を覚まさせるかのように、相手の背中に拳を叩きつけて。




見事な唸り声を上げた"それ"の耳元に、そっと囁いた。




「貴方はだぁれ?」




ひぃっ、と悲鳴を上げた"それ"は、よほどのドMらしい。




「ドMさんは、虐めてあげないと可哀想だものね?」




約束通り、ただひたすらに言葉で彼を弄ぶ。




一見刺激的な光景だが、毎日ともなると流石に飽きてくる。