あれから毎日この席に座って通学している。
またあの芋と話がしたい。
僕の中で芋の存在がどんどんと大きくなっていくのを感じた。
これは完全に恋だ。芋に恋をしてしまっている
「ヒロインの妹(いも)が芋(いも)だったなんて」
そう思いながら、毎日通学していた。
気が付けば高校生活も終わりに近づいていた。
「芋に恋をした高校生活だったな」
卒業式の朝、いつもより一つ早い電車で出かけることにした。
「高校最後の日だ、精一杯楽しもう」
電車の車窓から見える景色はまだ薄暗い。
ちょうど風早に近づくころには陽がのぼってきた。今日はとても霧が深い。
「ああ、芋に会える日は来なかったか」
電車のカタンコトンという音だけが聞こえる。
僕にとっては妹、というより芋が高校生活での一番の関心事になっていたんだな。
「あのー」
懐かしい、かわいらしい声が聞こえる
「万葉集の話をしたこと、覚えていますか?」
そこにはかわいらしい女子高校生がいる。
キレイなストレートヘアにショートボブが良く似合う。
めちゃめちゃかわいい、はっきり言って僕の好みど真ん中だ。
「あの日から、ずっともう一度会いたいと思っていました」
「ぼ、僕も・・・」
「連絡を待っていましたがなかなか来なくて、もう会えないかと思っていました」
「それにはいろいろと事情が・・・」
食べてしまった、とは言えるはずもない。
「もう一度連絡先交換してもらえませんか?」
「もちろん!」
ひきつった声で答えた。
今度は食べてしまわないように、QRコードを使って連絡を交換した。
その日から芋(もとい彼女)と付き合うまでに時間はかからなかった。
僕は東京の大学に行き、その間、彼女は地元の企業で働いていた。
四年後、僕は地元の企業に就職した。