「私を殺した犯人は、あの人です……!」
アマリリスちゃんが指した方向にいたのは……っ!

「あら、私?男以外は殺した記憶はないのだけど……」
えぇ――――――――っ!?アリアさまぁっ!?そりゃぁ連続殺人鬼王女ですけども……!てか、男以外は殺さないって衝撃発言飛んだわよ!?今飛んだわよ……っ!?

……ってことは今足元に跪かせている浮気不倫した婚約未遂者たちを殺したと言う明確な殺意があったと言うこと……!

あら……?アリアさまのアンデット下僕って3匹だったわよね。1匹いないような……。

「いえ、そうではなく……その……後ろの……」
アマリリスちゃんが指していたのは……まさかのアリアさまの後ろって……。

「いやん……っ、もう……っ。こんなところで……っ」
「君かわいいねぇ。ぼくとワンナイしない?」
「んもぅ……っ、こんなところで口説いてくるなんてぇ……っ」
「本当は今すぐにもしゃぶりつきたい……っ!」
「あぁーんっ」
いや、何してるんだあいつらは――――――――っ!アリアさまの後ろでは……まさかの。ニセアマリリスちゃんとアリアさまの下僕の1匹がいちゃコラしてたぁ――――――――っ!?

「あらぁ……」
アリアさまが後ろを振り返り、手を口元に当てた。ど、どうするの!?下僕がすぐ目の前でさっき絞めたニセアマリリスちゃんを口説いてるけど……!?

「あらあらあら、まぁまぁまぁ……」
スタスタと2人に近付いたアリアさまは……。

「何してんじゃワレエェェェッ!!!」
ひいぃぃっ!!?アリアさま怒りの鉄槌~~~~っ!!!

そして。

ぐしゃり。

げ……っ。腐乱から再構築されたその下僕の身体は粉々に崩れていた。

「キャァアァァァ――――――――ッ!!私のイケメン~~~~っ!」
ニセアマリリスちゃんのイケメンではないかなぁ……?アリアさまの下僕。ご主人さまはまごうことなき、アリアさま。そしてニセアマリリスちゃんのご主人さまも……。

「てめぇも潰してやろうかぁ……?次の身体はキメラやぞゴるラァアアァァァッ!!!」
ひぃ~~っ!?そしてキメラ……キメラは作っていいんだろうか……。トールをチラリとみやる。

「今度みんなを集めて久々にキメラ研修やろうか」
「それはいいですね!ドクター・ブラッドストーン!」
割りとノリノリ!?天使みたいな名前しといてエンジェルウィング検視官もノリノリいぃぃ~~~~っ!!!

「あのぅ……私の身体でさすがにキメラは……」
「こら……っ!持ち主からNGでたわよ!?」
「も……元、ですが」
それでも同じ顔だしいやだろ。

「ち……っ。ダメか」
まぁ却下になったようだからいいけど。

「さぁ~~て、潰しちゃったし肉体の再構築しないと……!」
アリアさまが下僕の再構築の準備を始める。

「じゃぁ、次はもう少し呪いを足して従順にしようか」
「はい、お師匠さま……!」
呪い足すんかい~~!アリアさまがどんどんえげつなくなっていく~~!

「あ、呪いと言えば……ニセアマリリスちゃんってしゃべれない呪いがかけられていたんじゃ……」

「一応外してる。じゃねぇと、新たなご主人さまになったアリアが呪いの余波を受けちまう」
「そうか……いつの間にそんなことを……」

「きゃっ、お師匠さまったら、優しいっ!」
「俺はビアンカと弟子と部下には優しい!」
わ、私も仲間に入れてくれてありがたいわね……うん。

――――いつの間にか仲間入りしてるぅ――――……。

『フゥ~~ウ~~~蘇れ~~蘇れ~~ヒャ~ハハヒャ~ハヒ~~イィッ』

下僕、復活!因みに儀式にはアマリリスちゃんとニセアマリリスちゃんも参加していた。あれ……近場にいるアンデットはもれなく参加なのかしら。

「それで……真犯人なんだけど」
「はい……!あの人……ベラドンナです!」
アマリリスちゃんが指差したのは……いや――……みんなもう分かっているわよね。

そう……ニセアマリリスちゃんこと、ベラドンナだったのだ……!

「な……何を……っ、私こそ本当のアマリリスよ!この身体だって手に入れた……!私こそがアマリ……」

「ふぅん……?ベラドンナちゃんって言うのねぇ……うふふ、うふふふふっ!イイコト聞いちゃったわねっ?」
アリアさまがものっそい女王さま然としてベラドンナを見下ろしていたぁ~~~~っ!

「ひぐっ」
ベラドンナがびくつく。

「アンデットと言うのはな、自分の名を主に知られると、もうどうにもこうにも逆らえなくなる。縛りを強くしたり、呪いを足したりするよりも……ずっとな……」
「……っ」
トールの言葉になるほど、となる。そして身体はアマリリスちゃんでも魂がベラドンナなら、ベラドンナの名で縛れるのね。

「あ、じゃぁファミリーネームとか、フルネームが分かったらさらにまずいんじゃ……」
「フルネームは……ベラドンナ・ピンクォーツですね」
と、アマリリスちゃん。あれ、フルネームネームが同じ……?

「私はアマリリスよぉっ」
ベラドンナは叫ぶが……。

「ふぅ~~ん?ベラドンナ・ピンクォーツちゃん……、ね?」
「ひぁうぅっ!!」
――――――アリアさま最強の防波堤~~っ!

「まぁあっちにはアリアさまがついているし、何があったのか聞かせてちょうだい?」
「は……はい。私は男爵のお父さまと、お母さまの3人で暮らしていたのですが。私が12歳の時、お母さまが病で急死した後は、お父さまと2人暮らしをしながら、のどかな男爵領を治めながら慎ましやかに暮らしていたのです」
ほうほうほう、明らかなヒロインちゃんポジなのに、男爵さまのお手付きで生まれた平民育ちだったけれども男爵家に引き取られる系ではなかった訳だ。アマリリスちゃんのお母さまは正式な男爵夫人で、アマリリスちゃんは正統な直系の娘だったわけね。しかし、そこにどうしてベラドンナが……?

「ですが平和な暮らしが一変したのは……お父さまが馬車の事故で還らぬ人になってから……私が15歳の時です」
はぅあぁっ!!アマリリスちゃん……まさかの過去を持っていた。そんな……そんな不憫系ヒロインちゃんの匂いがぷんぷんするこの展開は……!?

「叔母親子が押し掛けて来たのです。叔母は昔お父さまから男爵家から追い出されたのに、私を娘ひとりにはできないと無理やり押し掛けてきたのです。私には長年男爵家に仕えた家令たちがいたので、彼女たちの力は必要ないのです。それに家令を代官として任命できるよう王城に相談もしていましたから。あとは私が結婚できる年齢になれば婿養子をとって男爵家を継いでもらうつもりでした」
不憫系ヒロインちゃんめっちゃしっかりした子おぉぉ――――――っ!むしろしっかりしすぎぃっ!!

「でも叔母は図々しく居座り……彼女は既に夫とは離婚している叔母は離婚した夫との間に娘をもうけていて、その娘も一緒に。その娘が……ベラドンナです」
つまり……従姉妹なわけね。

「因みにもう男爵家の一員ではないのですが……叔母とベラドンナは勝手に男爵家の家名を名乗り始め……叔母は男爵代理を名乗り始めました」
うっわー、典型的よね。

「でも……」
「でもでも……っ!?」
その後の展開や……いかに……っ!

「陛下がそれを認めませんでした」
陛下はさすがというか、いや当然か。まともな陛下で良かったぁ~~。王太子みたいに浮わついてないし、今だって王妃さまおひとりにぞっこん、国内でも評判の仲良し夫婦なんだから。やっぱり陛下は違うわねぇ。

「……だから本当はファミリーネームもないベラドンナです」
何と……っ、一度はピンクォーツを勝手に名乗っておいたが、まさかの……ほんとはただのベラドンナ!平民だとファミリーネームがないこともあるし、かつて男爵家を追い出された叔母とベラドンナは、ファミリーネームを失ったはずである。

「うふふ、またいいこと聞いちゃったっ!」
びくっ。何だかんだでこちらの会話を聞いているアリアさま、さらに最強になりそうな予感……っ!

「それに……何でもお父さまの馬車の事故にも絡んでいたようで……。叔母はお母さまが亡くなったことをいいことに、お父さまを不当に殺すようならず者を雇ったそうです。その報酬に男爵家の資産を渡したらしいのですが……その際ならず者たちに酒を振る舞う振りをして毒殺し……資産は全て自分のものに。ドレスや宝石を買い漁り……呼ばれてもいない王城のパーティーに堂々と参加したために、不審者として捕らえられ、勝手に男爵代理を名乗った罪で獄中へ。その後獄中死しました」
さすがに男爵夫婦がいっぺんに亡くなれば不審がられる……だから、夫人が亡くなった後を好機と捉えたと言うこと……?
それに男爵が亡くなれば、直系はまだ少女であるアマリリスちゃんだけになる。だからこそ寄生し、乗っ取りに来たのね。

「まさかアマリリスちゃんにそんな過去が……。あれ?じゃぁ男爵家の資産は……?」
叔母に横領されたわけじゃないの。叔母が勝手に……とは言え、使ったものは国のお金、領民たちの血税。さすがにそれは国庫に返さなければならないのでは……。

「その……それは心配ないと……男爵領を自ら訪れて事の顛末を知らせてくださった陛下が仰って……」
え……?陛下が直接男爵領に赴いたの……!?そして返還の件が心配ないとはどういうことなのかしら……?

「それに、陛下に同行していた神官さまが私を聖女だと見抜いてくださって……私はてっきり聖女のお役目を果たすことでお金を返せるのだとばかり……あ、私の身体はベラドンナに取られてしまったから……もう聖女の力は……」
ふぐおぉぉっ!アンデットになってからもお役目を果たそうとするアマリリスちゃん偉すぎ尊い真のヒロイン~~っ!

「聖女の力は魂に紐付く。アンタがあの身体にいたうちは、ベラドンナも意識を乗っ取った間は使えただろうが……今は完全に分離したから無理だな。今聖女の力を使えるのは……このアンデットホムンクルスだけだ。アンデットになっても、聖女は聖女。まだその力は魂に宿っている」
「じゃぁアマリリスちゃんは今も聖女……って、トール。ちゃんとアマリリスちゃんって呼んだら?さすがにいつまでもアンデットホムンクルスは……」
「俺はビアンカと弟子と部下の名前以外は覚えん……っ!」
ついさっきも似たようなこと言ってなかったかしら、この男。

「じゃぁヒロインちゃん!」
「何だ?ヒロイン?」
「アマリリスちゃんのようなかわいくてけなげな女の子の呼び名よ!」
「ビアンカの方がかわいい……!」
「それはありがとう!でもそう言う話じゃないわよぉぉっ!!」

「あの……お2人とも……」

「あら、ごめんなさい」
アマリリスちゃんを戸惑わせてしまったわ……!

「そうだ続き……それで、叔母が破滅したことまでは聞いたわね。後は……そう言えば、叔母と一緒に乗り込んできたベラドンナはどうなったの?」
「それなのですが……陛下がベラドンナを屋敷から追い出してくれて、領地へは立ち入り禁止の末、別の修道院へと預けてくれたのです」
陛下やるわね。さすがは陛下よ。王太子にも見習って欲しいところよね。

「でも……そんなベラドンナがどうしてアマリリスちゃんの身体に……?」
「それなのですが……私が王立学園に入学して暫くして……」
故ピンクォーツ男爵のご令嬢……アマリリスちゃんは貴族の令嬢として、王立学園に通っていたのよ。この国の王族貴族はすべからく通うことになっている。確か平民でも優秀だったり、魔法が使えれば通えたはずよ。

「思えばそこでも……私、アマリリスちゃんに結構アタリ強かったわよね……今さらながらごめんなさい」
記憶を取り戻す前とは言え……今思えば完全に悪役令嬢だったわよね、私。

「そんな……っ、謝らないでください……!」
アマリリスちゃんが私の手を握る。

「アマリリスちゃん……っ」
「ローズサファイア公爵令嬢さまがいたからこそ……私は……。親もいない、聖女と言う肩書きだけを持った私に、貴族としてのたしなみを説いてくれたこと、今でも忘れません!いろいろ周りから言われましたし……亡きお父さまの男爵位を狙って婿養子の座を狙う令息もいました」
そ……そう言えばそうね……!?アマリリスちゃんのハートを掴めば、男爵位ではあれど爵位が手に入る……!貴族令息でも次男三男だと婿に入らなければ貴族位は受け継げず、平民となってしまうから……すぐそこに手に入る爵位が転がっているなら……手に入れたいと目論む不届きものもいるはずだわ……!

「だけど……ローズサファイア公爵令嬢さまが私の前に現れるたび、そう言った方々を追い払ってくださって……」
そう、だったかしら……?でも私はこのグリーンエメラルド王国でもトップ・オブ・ザ・トップ公爵令嬢。お母さまが陛下の妹だと言うことも大きい!あれ……確かお母さまって妹もいなかったかしら……よく存じ上げないのだけど……随分と前に亡くなられているはず……。いや、今はとにかく、そんなお母さまと公爵であるお父さまを持つ私は、流し目だけで他の貴族令息令嬢を黙らす自信があるわ……!だからこそ、私がアマリリスちゃんに苦言を呈するたびに、追い払うことになっていたのかしら。

「ありがとう、アマリリスちゃん。今さらながらアマリリスちゃんって呼んじゃってごめんなさいね」
「いえ……いいんです……!むしろ……嬉しい……です……っ!」
ふあぁ――――――――っ!何この美しい微笑み浮かべるヒロインちゃん・アマリリスちゃんかっわいすぎやろ尊すぎぃ――――――――っ!!!

「私も……ビアンカでいいわよ」
「はい……!ビアンカさま……」
あぁ……美しいわ。これぞ、美しき女の友じょ……。

「ねぇ……いつまでビアンカの手ぇ握ってるわけ?しかも名前呼びの権利まで許せない……。そうだ、いい考えを思いついた……。冥界に叩き落として魂ごと粉々にしてやろぉがあぁぁぁ――――――――――っ!!!」
ひいいぃぃぃ――――――――――っ!?大魔神ネクロマンサーが降臨したあぁぁぁっ!目ぇ見開きすぎ!血走りすぎいぃぃっ!顔の影すごいことになってるわよ正気!?――――――いや、正気なはずがない。やけに静かだと思いきや、少しずつ闇が……いや病みが育っていただけぇ~~~~っ!

「……い、いいじゃないの!友だちなんだから!」
「ビアンカは俺よりも友だちをとるの?」
そんな仔犬見たいな目ぇ向けんなぁっ!さっきまで目ぇ見開きっぱなしだったのにこの男は……っ!

「そもそも聖女!アマリリスちゃんは聖女なんだから!そんなことして大丈夫なの!?」
「大丈夫、冥界の神がついている!」

「冥界の神さまに迷惑かかるあれでしょそれ!!んもぅ、それはそれでいいから!その前にアマリリスちゃんに何があったのか……!その先を明らかにするのよ……!」
「え、だから撲殺……」

「に、至った経緯をよろしく頼むわ」
「は、はい……っ!もちろんです!」

――――――次回!アマリリスちゃん撲殺殺人事件の真実が明かされる……!?