「とにかく……!色々とあったけどもまずはひとつずつ解決していきましょう!まずはヒロインちゃん……じゃなかった。アマリリス・ピンクォーツ男爵令嬢についてだわ」
はい、仕切り直しいぃっ!

「よっ、名探偵ビアンカ!かわゆすお兄さまのかわいい妹ビアンカ!」
「いや、違うから。世界観違うから。アンタたちがボケまくるがゆえの苦肉の策でしょうがっ!」
ほんと、この世界にツッコミは私しかいないのか……っ!

「ぐ……っ、ビアンカの許可さえあれば、ビアンカ愛を叫ぶこの男をキメラ爆破してくれるのに……っ!」
トールはトールでまたとんでもないところに嫉妬心燃やしてるわね。
「キメラ爆破はともかく……お兄さまに関しては私は何も言わないわよ」
「え……そうなの、ビアンカ!」
トールがめっちゃ目を輝かせてくるんだけども。

「……でも、アンデットとして蘇られたら迷惑だから生かして置いた方がいいかなと思うだけよ?」
「んー……、それなら蘇れないように魂を冥界に落として粉々ぐっちゃぐちゃにめちゃくちゃに……しようかぁぁぁっ!!」
ニタアァァァァッ!!
――――――ひぃあぅっ!!?
前半真面目に語ったかと思えば突然の恐怖の笑み~~っ!

「いや……その。シスコンウザイけどさすがにそこまでは……。それに、公爵家のお仕事もあるし、領民たちも困るから、お兄さまにはこのまま生きていてもらわないと」
「しゅん……っ」
あからさまに残念がるわねー。

「と、とにかく!このまま行ってもボケ倒すだけよ!ここは……先に進むわよ!まずは……ヒロインアマリリスちゃんだけど……魔法解剖医なんだから、まずはアマリリスちゃんの死因を特定しないと。仕事しなさいよ、仕事」

「えぇー……死因かぁ」
アンデットとなったアマリリスちゃんに近付いていくトール。良かった。少しはまともに仕事するんじゃない。ちゃんと魔法解剖医っぽい……。

「後頭部に打撲痕があるな」すげぇ、魔法で難なく見抜いた……っ!ふざけた男だけど、ちゃんとするときはするのね!

「……ってことは犯人に後ろから……っ」

「しかしドクター・ブラッドストーン。これ、ずいぶんと前のものではないでしょうか……?」
と、エンジェルウィング検視官。
随分と前……?一体どういうことかしら。

その、時だった。

「そ……ぞれは……っ、あぁぁっ」
ちょ……しゃべり始めたアマリリスちゃん、ちょっと恐くない!?大丈夫かしら……!?ふるふるしてる……!めっちゃ身体左右にぶるんぶるん揺れてるんだけどおぉぉぉっ!!!

「実はベラドンナ……が、ぼく……っ、ざ……っ」
……え?何かノイズが混じっていてよく聞き取れない。しかもベラドンナって……誰?

「お、よ……よよよおおぉぉぉ……っ、よげいなこと言うんじゃないわよおぉぉぉっ!今の……今の何でもないのよ!オーッホッホッホッ!」

「いや、明らかにおかしいでしょうが!そもそもアマリリスちゃんとは性格違わないかしら?」
普段のアマリリスちゃんはもっと清廉潔白なヒロインちゃんっぽかったわよね。いや……確か2年の王太子たち侍らし始めた頃から魔性のヒロインっぷりを見せ付けていたやうな気がするのだけど。

「それはベラドンナが……っ、よよよ、よげいなごど言うなぁぁぁっ!あ、これは演技でぇすっ!」
まともな方を演技って言ってきたぁ~~っ!それ本性ヤバいって言ってるようなものでは……!?

「んー、面白いなこの死体。中に魂が2つ入ってる」
「あー、本当だ。何か変だと思いましたよ。いやぁ、さすがはマッドドクター・ブラッドストーン」
遂にぶっちゃけたわね、エンジェルウィング検視官……!やっぱりトールはマッド……いやいやそれよりも……!

「魂が2つってどういうこと……?」

「その言葉の通りだ。しかし……魂が2つも入ってるとややこしいなぁ……よし、ひとつ出すか!」
「出せるの!?」
「うんうん。ほらよっと」
トールは何もない空中に手を翳すと、そこから毒々しい何かが湧き出てくる……。

「いや、あれは産み出していいものなの……!?何かヤバいもの産み出そうとしていない!?」

「問題ない。魂の入っていない……空っぽのアンデットホムンクルスだ……!」
何そのよく分からないホムンクルス!普通のホムンクルスじゃあかんのかいっ!!
そして出来上がったアマリリスちゃんそっくりなホムンクルス……ただしアンデット。

「そして……魂をいっこ移す。えいっ」

トールはアマリリスちゃんとホムンクルスアマリリスちゃんの後頭部をそれぞれ掴み……勢いよく2人よおでこを……カチ合わせた。

ガチコーンッ

ギャ――――――っ!?何あの荒治療は~~っ!いや、つーか治療行為に入るんだろうか、あれ。

「よし、移った~~」
「そ、それなら良かったけど……」

「あ、私……自由!?ついにベラドンナから自由になったんだわ!」
しゃべったのはアンデットホムンクルスのアマリリスちゃん。

「ぎゃっはははははっ!これで私は本物のアマリリスよおぉぉぉっ!!!」
元々のアンデットアマリリスちゃんが叫ぶ。

「ちょまーっ!?トールったら、何となくだけど……何となーくだけど、本来のアマリリスちゃんを本体から追い出してないかしら……っ!?」

「いやー、これね、本来の黒魔法では移し替える方の魂を選択できないから、確率五分五分」
「ダメじゃねぇかっ!!」

「でもこれで楽になった。魂がひとつなら……うるさい方を黙らせればいい」
そう告げたトールはアマリリスちゃんの偽物(多分)の顔の前に手を翳す。

「ほい、しゃべれなくなる呪い」
……呪い?今こやつ呪いって言った!?
いや、黒魔法使いってそう言うの得意だけども、ノリかっるぅっ!こう言うのってそう言うノリでいいの!?しかし呪いは発動しているようで、ニセ(※仮)アマリリスちゃんはパクパク口を動かしているが何も声が聞こえない。
すご……本当に効いてるわ。

だけどしゃべれないことに業を煮やしたのか……アマリリスちゃんがカッと目を見開きトールに襲い掛かる!?

「危ないトール!」
そう身を乗り出した瞬間、ニセアマリリスちゃんがトールの前から姿を消した……?しかし同時に頭上が暗くなる……。ハッとして頭上を見上げれば。

「イイィィヤッハアアァァァァァ――――――――ッ!!クタバレ悪役令嬢ビアンカあぁぁぁぁっ!!!」
いや、だから何で私が悪役令嬢なのよ……!しかし……どうしよう……脚が……震えて……っ。

あれはニセアマリリスちゃんとは言え……ひとではない、アンデットなのだ。

「ビアンカ!」
その時トールの声が響き……私を抱き寄せ頭上に手を伸ばす。

「ハァ……ッ!!」
そしてトールの掌から何か毒々しい黒いビームが放たれるうぅぅ――――――――――っ!?

「ゲウッッ!?」
トールの黒いビームでぶっ飛ばされたニセアマリリスちゃん
天井に激突して床に落ちてくるが、トールが素早く私を抱き寄せたまま後ろに下がってくれて事なきを得る……が。ニセアマリリスちゃんが落っこちた床がめっちゃめり込んでるけどあれ何!?王城のパーティーホールだもの……!まごうことなき大理石だと思うけど……。

「あの……やりすぎなのでは……」
ニセアマリリスちゃんだとしても、さすがにあれじゃぁ……と、思ったのだが。

「キヒッ、キヘヘッ、ギャヒィヒヒヒッ」
「ひぃっ!?」
不気味な笑い声を出しながら、腕が妙な方向に曲がったニセアマリリスちゃんがニタニタしながら立ち上がるうぅぅぅ――――――――っ!?

「え、アレ生きてるわよね!?生きてるのよね!?」
「え?アンデットだから死んでるけど」
やっやこし――――――ぃっ!!
そう言うことじゃなくて……っ!

「でもアンデットだからさぁ……普段人間が無意識のうちに封じ込めてるリミッターが外れてるからね。怪力で、さらに魔力も放出し放題で非常に危険なんだよなぁ。……そう、例えるなら火事場の馬鹿力かな!」
平然と語ってるけど、それってピンチなんじゃないのぉっ!?さっきのトールの魔法受けてもまだ動いてるわよ……!?
しかしその時、その緊迫とした現場に似合わぬ呑気な声が聞こえてくる。

「あらまぁ、暴れてしまって……。悪いアンデットちゃんだこと……」
あ、アリア王女!?
そんなスタスタと近寄ったら、さすがのアリア王女でも危険なのでは!?

「ほ~~ら、大人しく……セィヤオラアアァァァァァ――――――――――――ッ!!!」
ひえぇぇぇ――――――――――っ!?のほほんとした王女の殻を捨てて、アリア王女がプロレスラーさながらの絞め技かけてるんだけど何かしらアレ――――――――ッ!!!

「いや……あれ……っ。大丈夫なの?ニセアマリリスちゃんって今リミッターなしなんでしょ?」
いくらアリア王女がプロレスラーさながらの実力を……王女なのに何故か持っていたとしても……!いや、プロレスラー並みに強い王女さまもカッコいいけど……。そんなアリア王女から浮気不倫した下僕たち……勇気あるわね。

「ふむ……さすがだな。あの怪力を素手で沈めるとは……。俺なら……」
何か普通に感心してるんだけどー。でもさすがにぶっ飛びすぎなトールでもアリア王女のような力業は……。
いや、そもそも何でアリア王女があんな力業を……?だけどあの人ならもう何でもありな気がしてきた。

「ついついバラバラにしてしまいそうだ」
「いや、どうなったらそんなことになるのよ!アンタは直接触るの禁止!アリア王女に任せるわよ!?」

「あら、そんな王女だなんて……アリアでいいのよ?もう国を出た立場だし。仲良くしてくださると嬉しいわぁ。んーと、ビアンカさん?」
「えぇーと、はい……アリアさま」
それはそれでいいんだけど。
「きゃっ!グリーンエメラルド王国で初のお友だちができちゃった!嬉しい!」
「そ……それはその、ありがたいです」
サイコパス殺人鬼天才ネクロマンサー&プロレスラーだけども。
しかもアリアさまは現在、ニセアマリリスちゃんを絞めている真っ最中である。ポテンシャルすごすぎる、アリアさま。

「ほぅら、首輪着けましょおねぇ」
は……っ、アリアさま、まさかニセアマリリスちゃんでさえも従わせる天性のネクロマンサー!?

「大人しくセイヤァッ!テメェは今からこの私の下僕になれやオラァァァァッ!!!」
とんだ恐怖政治――――――――っ!しかし首輪をはめられたニセアマリリスちゃんは……大人しくなった。

「うふっ!イイコねっ!あなたも私のお友だちよぉ……?」
恐……っ。やっぱアリアさま恐あぁぁぁっ!多分あの人には……決して逆らってはならない……っ!

「まぁニセアマリリスちゃんが大人しくなったから、アンデットホムンクルスのアマリリスちゃんに話を聞くわよ……!」

「ふん……っ、犯人ならお前に決まっているだろぉが、ビアンカぁぁぁ――――――っ!」
「あ、王太子殿下!無事に復活したんですね。あと、いい加減私を犯人にしないでくださいよ。身に覚えがありません……!」

「なん、だと……?いや、しかしここは……そうだアレだ!二重人格だと言う線が……いや……もしかしたら、犯罪を犯した記憶をまるで忘れていると言う……記憶喪失型サイコパスか……っ!?」
「王太子殿下、それは推理小説の読みすぎですってば」
あとサイコパスはアリアさまですってば。

「だが、以前の君は……もっと令嬢っぽかった」
「……」
ぐうの音も出ねぇ――――――――。確かに前世の記憶を取り戻してからはっちゃけすぎたとは思っているけども……!
むしろよく分かったな王太子殿下!?いや、さすがに分かるかしら?

「貴様ぁっ!うちの妹に文句をつける気かあぁぁぁっ!いくら王太子であろうとなかろうと、妹が妹であることを否定するのならば、貴様が自分の妹王女のドレス試し着した写真妹王女にチクってやろうぞおぉぉぉ――――……っ!」
お、お兄さま……!言ってることよく分からないけど何かカッコいい……っ!

いくらお兄さまが公爵令息とは言え、王太子殿下に対しそうも強く出て、妹のために物申してくれるなんて……っ!

今までシスコンウゼェと思っててごめんなさい……!でもやっぱりいざというときのお兄さまは頼りになるわね……!

――――とは言え。

うおぉぉいっ!
王太子殿下、妹殿下のドレスで何やってんのぉっ!女装癖があったのか、妹の着たドレスを着たかったのか……。いや、でも前者なら自分でオーダーすればいいってものよね。

それとも婚約者もいないのにオーダーしたらさすがに癖がバレるからかしら……。だけど……妹のはないわぁ……妹として言わせてもらおう。

そしてお兄さまの衝撃発言を聞いた王太子は……。

「それだけはいやだぁぁぁぁぁ――――――――――っ!!!やめてくださいいぃぃぃっ!妹にクソを見るような目で見られるのお兄さま耐えられないいぃいぃ~~~~っ!!!」
床に四つん這いになり絶叫した。いや、本当に嫌なのは妹殿下だろ。つか、それなら是非ともクソを見る目で見つめてもらったらいいと思うわ……っ!

「けど……確かに今日のビアンカちゃんはちょっといつもと違うと思う」
ん?ヴィンセント?てか、呼び方!ビアンカ【ちゃん】全開にしてるけど……もう隠さないことにしたの?それ。

「前は……もっと蔑む目を向けてきてくれたのに……今日はあまりゾクゾクしないんだ」
「いや、エムかよ。お前はエムか」

「それだぁ……!そこがいつものビアンカ・ローズサファイアと違う……!」
ぐ……突然のミ……チョメチョメなのに鋭いわね!?確かに公爵令嬢……記憶が戻る前の私っぽくないが。

「いや……私あなたの名前も知らなかったのよ?あなたにいつものとか言われたくないのだけど」
「がはぁ……っ!!」
ミ……味噌汁は……崩れ落ちた。

「そうだぞ貴様……っ!せっかくのビアンカちゃんの蔑む目を……私がどんなに欲しかったか……っ!」
えぇー……。ヴィンセントは何を悔しがっているのよ。あと蔑む目……?していたかしら?

「とにかく、私は私よ。王太子殿下の女装癖も知らなかった間柄なのに、あなたにいつもと違うとか言われたくないわよ」
「……うぐ……っ。女装癖じゃないもん……妹に包まれたかっただけだもん」
つまるところはキモいシスコン兄か。妹殿下に通報しておこう。

「とにかく、ことの真相を握っているのは、何を隠そうアマリリスちゃんしかいない!アマリリスちゃん、あなたを殺害した犯人はだあれ?臆することはないわ。だって今のあなたはホムンクルスとは言えアンデットホムンクルスなの!怪力バカ魔力バカを極めている以上恐れるものは何もなくてよ。もちろん私が犯人だと言うなら言うがいいわ!受けてたちましょう!いやあり得ないけれど!さぁ、誰が犯人か、仰ってご覧なさい……!」

「ろ……ローズサファイア公爵令嬢さま……っ」
アマリリスちゃんが覚悟を決めたように頷く。そしてゆっくりと腕を上げる。

「私を殺した犯人は……」

「犯人は……!?」
その場に緊張が走る。

「犯人は……あの人です……!」
アマリリスちゃんが指差したその先にいた人物に、みんなの視線が集中する。

え……そんな、バカな……っ!?