「うふふふふ……さぁ、みんなぁ……新しいお友だちが出来たわよぉ……?」
美しく清楚そうなアリア王女殿下が、不気味な笑みを浮かべているのだけど……!?
え……しかも……『みんな』……?

次の瞬間、アリア王女殿下の足元からのっそりと3つの影が沸き立つ……。
――――――ってヒイイィィィィ――――――――っ!!?

そこから、嫌に肌色の悪い腐乱死体が湧き出てくる~~っ!いや……でもみんな……いやに顔立ちがきれいね。腐敗臭満載、腐りかけだけども元々の顔立ちのよさは分かるし、生前身に付けていたと分かるその衣装はほつれ黒ずんでいるものの、確実に上流階級のもの。

まさか……この人……っ!

「うふふ……どうかしら?私の自慢のコレクションたち。ほら見て?ステキでしょう?私のアンデットちゃんたち……!見ての通りみ~~んな、死んじゃったっ♪」
笑顔で言うことじゃねえぇぇっ!
まるでメルヘンの国のお姫さまみたいな背景流れてるけど、足元にはアンデット、セリフが黒すぎるうぅぅっ!

「あの……彼らは……」
「彼らは……私を愛したが故に、死んでしまったの……。あるものはメイドに色目を使ってナンパしやがったから縄で首を絞めている途中で……。あるものは貴族の夫人と不倫の上八ツ股かけてたから、王宮のバルコニーから飛んでって命じたら……。そしてあるものは貴族令嬢と朝チュン浮気したから、罰にナイフでめった刺し、その上仕上げに串刺しにして飾り付けてあげたの。なのに……どうしてかしら。みんな……何故か私との婚約直前で死んじゃったのよねぇ。不思議だわぁ~~」
何故か……じゃねええぇぇぇっ!完全犯人このひとじゃんっ!とんだ殺人鬼王女だよコレえぇぇぇっ!王太子殿下も何つー殺人鬼王女引っ掻けてきたの!
そして陛下よく婚約許可したわね……!?それとも隣国では国家機密として隠されてきたのかしら……!?公爵令嬢の私でも隣国にそんな危険人物がいるなんて聞いたことないいぃぃっ!

「だけど……みんなアンデットとして蘇ってくれたの……!私のこと、こんなに愛してくれている上に……とっても従順なの……!」
アンデットとして蘇ったのはただの未練んんんっ!そして従順ってことは飼い慣らしたの!?アンデット飼い慣らしたのかこの殺人鬼王女ぉっ!ネクロマンサー?まさかネクロマンサーの天賦の才能を持っているとでも言うのか……!?
まさか……自然に蘇ったのではなく、王女が無意識にアンデット生成したとでも言うのかしら……っ!?

「……うーむ」
その時、隣でトールが首を傾げる。は……っ!そうよ……ここにはもうひとり、プロのネクロマンサーがいるじゃない!もしもの時は……頼ってもいいのよね!?一応免許持ってるのよね……っ!?

「……これは……死体の処理が甘ぇな」
そこ……!?え、注目すべきはそこなの!?もう少し殺人鬼王女にビビったりしないの!?それともビビったら終わりなのかしら、そう言う世界観なのかしらネクロマンサーの世界って……!

「あのー、このアンデット、死んだらひとりでに蘇った系ですかー?」
そしてトールは何事もなかったかのようにアリア王女に話し掛けた――――――っ!

「そうなの。みんな私のことが大好きなのよ」
そして自然に蘇った系?大好きなの?王女が大好きだから蘇った説でいいのかしら……?なら怨霊ではない。
女遊びやらかしたせいで無惨にも殺された未練じゃなくて、王女を本気で愛してたの!?不倫やら浮気やらしてたけど……!王女の気を引きたかったとか……?随分と命懸けの気の引き方ね……現にもうアンデット化してるし。

一方で……。

「うっひょー、イカしてるぅ――――――」
パチパチパチパチと拍手を贈るトール。しかも棒読みだし……っ!

「でも契約の結び方が雑だねー」
そんなハッキリ言って大丈夫!?相手はサイコパス王女よ!?

「あら、そうなの……。アンデットの生成なんて、見たのは、そうね。子どもの頃、お兄さまたちについてグリーンエメラルド王国を訪問した時だから……うろ覚えなのよね。そろそろ本格的に習った方がいいかしら」
わりとケロっとしてるけど……何で王女が子どもの頃に見てるのアンデット生成方法……!そしてこの王女に生成方法見せたネクロマンサーどこのどいつよ出てこいいいぃぃっ!間違いなくアリア王女のサイコパスネクロマンサー化の犯人そいつじゃない!そいつこそ……真の、黒幕……!
それに……アンデット生成はちゃんと習ってからにして欲しい。いや習ったからと言ってほいほい作っていいものじゃないけれど……!

「あと、アンデット飼うならちゃんとメンテしなきゃー。メンテ大事~~!」
アンデット飼うって……ペット飼うように言うわね。てか、そこなの?王女が殺人鬼だった真実よりも、そこなの!?

「結構崩れちゃってるし……腐乱した肉体の再構築からやっていこうか」
「はい……!お師匠さま!」
いや待って。やるの!?腐乱した肉体の再構築とかやっちゃうの今ここでぇっ!それからアリア王女、いつの間にかトールをお師匠さまと認定してるんだけど……!?アンタいつの間に弟子迎えたの~~っ!

「まずは手始めに黒魔方陣描こうか~~、この図面で」
死霊魔法は黒魔法の一部だけど、特殊な領域だから普通は黒魔法とは別に述べられることが多い。別の【死霊魔法】ってくくりになるのよ。
だけど使う魔法陣は黒魔法のもので間違いないようだ。
――――そして、それを見たアリア王女は……。

「まぁ、かわいくて素敵な黒魔方陣だわ!」
いや、髑髏とかあるし見るからにおどろおどろしいのだけど……!?てか、あれ髑髏描ける画力なかったら無理じゃない!?

「因みに……死霊魔法ビギナーには魔方陣トレースマットをプレゼント……!」
「きゃぁっ!嬉しい!これは便利ね……!」

「ほんとね……。そこは納得だわ。だってあれがあれば、もっと魔法や術式が便利になるのに……何で今までなかったのかしら……?」
「女神よりも尊いお兄さまの妹よ」
……っ!?いきなり出てきたぁ――――っ!?兄……っ!!

「……あら、お兄さま?いつの間に復活していらしたの?……てか、前半の接頭語何?」

「ハァハァ……お兄さまは……一応死んでいないぞ!でも妹の下僕になってドレスのスカートの中に籠れるなら大歓迎だな……!」
「いや、やめてよ。そんなんだからアマリリスちゃんにもドンびきされるのよ。あと、お兄さまは絶対死なないでね。絶対呼んでもいないのに蘇って変態行為に没頭しそうだわ。せめて強制浄化魔方陣をこしらえるまで待っててちょうだい」

「あぁ……我が妹はなんて優しいんだ……!ハァハァ」
うん……?強制成仏させる魔方陣をこしらえる辺りかしら?

「お兄さまは妹のために、生きる……!」
そうね。強制浄化魔方陣って高そうだし……聖魔法使いを大量に雇う必要がある。神官を当たれば聖魔法使いも手に入ると思うけど……金と労力がかかりそうだか、とりま生きててくれた方が楽だわ。

「……あ、そう言えばお兄さま。さっき何か言いかけてなかったかしら?」
「うん?ハァハァ……そうだった!あのトレペ魔方陣だけど……普通は作ったら即処刑されるような違法なモノだね。あれがあれば国家機密の魔法とかも平気で国外に持ち出せちゃうし、犯罪組織に禁術流し放題になってしまうねっ!」
「いや――――――――っ!?マジで違法なものだったぁ――――――――っ!あのネクロマンサーどんだけ違法物溜め込んでんのよ!そしてしかも提供したのが隣国の王女~~っ!うちに嫁ぐかもしれないけどまだ国籍は隣国じゃないアウトじゃない!」

「……でも、魔法解剖医だけは許可されている」
「相変わらず魔法解剖医、強いわね。さすがは死霊魔法ですらも合法なぶっ飛び感。でもアリア王女はいいの?まだ隣国の姫よ」
「その事なんだけど……実はね、隣国からヤバすぎて隣国に置いておけないからって、隣国からうちに押し付けられたらしいよ」
そりゃぁ、連続殺人鬼な上にアンデットとして蘇らせて侍らせている王女である。

「いや、でも何でうちの国に……?」
「うちの国には陛下も国家公務員の魔法解剖医がいるからね……!陛下も優秀なネクロマンサーになりそうだから喜んでって呑んだらしいよ」
「そう言えばそうだった~~っ!!」
解剖技術はもちろん、呪いや毒、容赦も慈悲の欠片もないデデデデデバフといった黒魔法から、アンデットを自在に操るネクロマンサー技術ですら合法と認められるやつらである。

ネクロマンサーの素質のあるアリア王女を飼い慣らすには……うってつけの存在だわ……!

そして陛下!アリア王女はあくまでも『優秀なネクロマンサー』なの!?サイコパス殺人鬼だってよりも注視するのはそこおぉぉっ!?
――――陛下は陛下で……、下々から上々の者にまで計り知れない感覚の持ち主ね。さすがは国王陛下。

「あ、でもアリア王女をうちの国預かりにするとはいえ……何故王太子殿下の婚約者になることになったのかしら……」
アンデットを自然発生させてお散歩させちゃう王女殿下よ……?浮気不倫したら人生終わるじゃないの。蘇るとは言えさすがにアンデットの状態じゃぁ子孫は残せまい。

「あぁ、それ。実はね、うちの国に引き取られた際、王女を出迎えた王太子が一目惚れしたらしい」
「まぁ……確かに美人だものね」
今アンデットになっている男たちもそのルックスに騙されて近付いたのかしら。
そしてよく浮気不倫するものね。その末路がアンデットとか恐すぎるけど、女って時に恐いものなのよ。

あと、学園ではアマリリスちゃんに心底夢中だったくせにもうあたらな恋かよ。
あの王太子……大丈夫かしら。次に移り気起こしたら……確実にその息の根を止められるわよ……!

「まぁ、もしもの時は妹殿下もいるし、そうなった時はそうなった時で別にいいかって陛下が」
「陛下――――――――っ!?いいの!?息子がアンデットになっても!!もはや諦めモードなのは……」
確かに王女殿下はいらっしゃるけど……!
あとうちのお母さまも王家から降嫁はしてますから……!
諦めモードなのはやっぱりあの王太子だからよね……!

「それにしても王太子殿下は最近尻の振り方が激しかったから。それにアンデットになれば命じれば仕事するしいいかなって陛下は黄昏ていらした」
「まぁ……そうね。在学中アマリリスちゃんに夢中になってほかの高位令息たちと一緒に逆ハー築いて浮世を流していたかと思えば……アマリリスちゃんが死んだ今はアリア王女だものね。ほんと尻振りの軽い……」
でも陛下……アンデットにしてまで仕事やらせるとか……鬼畜うぅぅっ!!
――――――とはいえ。

「……あれ、そう言えば渦中のひとりでもあるアマリリスちゃんは……」
妙な咆哮をあげていたけれど、その後どうなったのかしら……?

「あぁ、あのピンキークォーツ男爵令嬢か。お兄さまは妹のビアンカたん以外はどうでもいいのだが。ビアンカたんがそう言うのなら、それなら……」
「いや、ピンクォーツです。お兄さま。あと私の名前の後に変なものつけないでくださる?」

「ハァハァ、妹のお兄さま……ハァハァ」
やっぱりこの兄も……アリア王女に飼ってもらったほうがいいのではなかろうか……?
シスコン変態すぎてちょっとウザくなってきたわね。

「ピンクォーツならあそこだぞ」
「……ん?」
お兄さまが指差した先には……。

『フゥ~~ウ~~~蘇れ~~蘇れ~~ヒャ~ハハヒャ~ハヒ~~イィッ』

無事に描き上がったらしい魔方陣の回りをノリノリでぐるぐる回るトールとアリア王女と愉快な腐乱アンデットたちに混ざって……アマリリスちゃんまで参加してるうぅぅ――――――――っ!?

そして何なのその掛け声!?微妙に短調なところが逆に不気味すぎるのだけど……!?
魔方陣の周りに蝋燭灯ってるさまも前世の黒魔法のイメージにピッタリ!ザ・オカルトのノリ~~っ!!!

「あ……でも、アマリリスちゃん……あなたやっぱり……アンデットになってしまったのね」
そして不思議なことに、アリア王女が連れていたアンデットたちの肌が……みるみる美肌にいぃぃっ!うっわ……マジで美青年たち……!ものっそい美青年たち……!

「よぉ~し、肉体の再構築はできたから、防腐処理もしておこ~う!」
防腐……まぁ必要よね。しなきゃ腐るだけよ、アンデットだもの。

「はい、お師匠さま!」
そして相変わらずトールのことは全尊敬してる。そしてアリア王女を扱いこなすトールの底が知れない……っ!

……因みに、アマリリスちゃんも防腐処理をしてもらったらしい。――――その、良かったわねぇ~~。うん……良かったのかしら。

「ついでに、ビギナーにオススメなのがこのリード付き首輪!ご主人さまの元からは決して逃れられない黒魔法が組み込まれているんだ……!因みに、パンイチにすると首輪とリードが映えるんだ!」
えげつないもん提供してないか、トール。

「まぁ……!便利ねぇ」
アリア王女は嬉々としてそれらを受け取り、服を剥いでパンイチにして首輪とリードを取り付けた。

因みにリードの先は、アリア王女の足元のよどんだ闇の中に沈んでいる。それが逃げられない黒魔法かいぃぃっ!

いや――――、しかし。見事にアリア王女のペットになったわね。元々ペットだったけど、今ではより一層ペットらしくなったわね。ほら、アリア王女が座り心地を確かめている。
満足そうな表情を見せる以上、納得の行く出来に仕上がったようだ。

「あれ……?そう言えば王太子は?一緒に防腐処理してもらわなくて良かったのかしら……?」
こう言っちゃぁ何だが、王太子の屍とか悪用されたら困るし、きっちりと処理してもらった方が良かったのでは……。あんなんでも一応王族。王家の直系だもの。

「ふむ……では我々が検視を担当いたしましょう」
「……ふぇっ!?」
気が付けば王太子の傍らには黒いスーツ姿の青年が跪いていたのだ。しかもただの黒スーツではない。背広とズボンだけではない。シャツとネクタイまで黒ずくめ!いや……あれ?その背広、ちょっと長いわね……って、この人も漏れなく白衣スタイルの黒衣……っ!

「あの……あなたは、何者……?」
「彼は検視官だ」
その時、やって来たのはトールである。

「解剖医が解剖する前に、まず我先と死体検分を行い、解剖が必要かどうか、どの解剖が最適かを見抜くエキスパートだ。因みに解剖以外も黒魔法と死霊魔法の知識、資格を持っている。魔法解剖医との違いは医師免許の有無と、基本は死体検分が仕事と言う点だな。時には魔法解剖医の解剖の助手をすることもあるが、解剖を仕切るのはあくまでも医師免許を持つ解剖医だ」
「へぇ、そんな違いがあるわけね。魔法解剖医と検視官の違いがよく分かったわ。あれ……でもアマリリスちゃんの時はいなかったわよね……?」

「断罪現場では真っ先に駆け付けるのが魔法解剖医だから、検視官が間に合わない時があるんだ……!」
「検視官の意義ぃぃっ!」
まぁ考えればそうよね。真っ先に駆け付けるの、何故か魔法解剖医なんだから……!

「でも断罪現場以外では真っ先に検視官が行くよ。俺たちは解剖室で待ってるだけ」
「あぁ……そうね。駆け付けないといけないのは断罪現場だけよね」
断罪現場だと検視官の仕事も魔法解剖医がやらないといけないのね……大変だわ。

「ドクター・ブラッドストーン!」
検視官がトールを呼ぶ。その呼び方は正しいのだけど……ダークな匂いがぷんぷんするのは気のせいかしら……!?いや紛れもなくダークなエキスパートなのだけど……!

「どうした、エンジェルウィング検視官!」
いや、検視官!検視官のファミリーネームうぅぅっ!
めちゃくちゃ聖なる感じがするのだけど……それでよく聖職目指さなかったわね!?
聖騎士の名家にエンジェルウィング伯爵家ってなかったかしら……!?それともそれ故の反発か……単に黒魔法の才があったのか或いは好きだから……!?
そして聖騎士の家系ながらも聖騎士ではないからトールも平然としているのかしら。
むしろこの男のことだ。聖騎士の家系を闇で汚してやったのだと嬉々としてほくそ笑みそうである。

そしてトールに呼ばれたエンジェルウィング検視官が……くわっと目を見開く……っ!

――――ごくり。

「この死体……生きてます……!」
「なん……っ、だと……っ!?」
「いや、生きているなら死体ではないと思うのだけどおおぉぉぉ――――――っ!?良かった!取り敢えず良かった生きてたぁっ!いや、単にこの人極辛シシカバブ食って失神しただけでしょうけど!?辛いもの好きとか言っておきながら撃沈したわね!?」
「え?王太子殿下は辛いものが大の苦手で、本格麻婆豆腐ですら無理なんだよ」
と、お兄さまからの突然の解説。いや、大の苦手だったの!?ただの見栄っ張り!そしてお兄さま!辛いもの苦手な人に本格麻婆豆腐はダメでしょうが!和風の辛くない麻婆豆腐にしてあげなさい!てか、普通に中華あるのねこの世界。さすがは中華。異世界にまで進出していたわ。ここ……なんちゃってヨーロッパな世界観の国だけどね。

「くぅ~~っ!断罪現場で死体が2つも手に入るとドキドキワクワクしていたのに……!ああぁぁぁ……っ!!」
「いや、トール!アンタ断罪現場で死体手に入れるのが目的なの……!?そもそも古今東西の断罪現場において、死体が転がっている方が珍しいわよ……!」

「だって……だってぇっ!断罪劇に死体だなんてロマンだろおぉぉっ!?」
「そんなロマン知らないわよ」
断罪劇に死体とか恐怖でしかないわよ!ほんと何がしたいのよこの魔法解剖医は!

「そうだ……閃いたぞエンジェルウィング検視官……!息の根を今度こそ止めればいい……!どうやって息の根を止めようか」
いや、とんでもない思考に言ったのだけど!?生きてるんならホワイトな医者に引き渡しなさいよ!聖魔法使える医者に引き渡しなさいよ!

「そうですね……喉に菓子パンを詰めさせましょうか。かつての王族がパン不足の時に菓子パンをこれ見よがしに食べたことによって庶民により引き起こされた革命は未だに民草に語り継がれる代名詞。それに沿った流れは、民衆に大いにウケるかと……!」
そう言えば前に習ったわね、菓子パン革命。菓子パン革命は、王族や領主貴族は民にとってどうあるべきかを後世に語り継ぐ良い教訓の物語となっている。だから今は……主食のパンだけではなく、菓子パンもしっかりと庶民にまで行き渡ることになったのだ……。
しかし……。

「いや、生きてるならそのまま生かしなさいよ……!何で息の根を止める流れになるの!?あと、そう言うウケは求めてないと思うわよ!?民衆も……!」

「どうして……ビアンカ……!まさかこの男に未練が……っ」
「いや、アンタはどこに驚愕してんのよ、トールったら。私は別に王太子殿下なんてどうだっていいわよ。未練もなにも、何の感情もないわ。王族だから一応敬うけれど。……ただ王太子アンデットが面倒だからいらないだけよ」

「あら……ベリルさまのアンデットちゃん……手に入らないんだ……しゅんっ」
アリア王女はアリア王女でしれっとアンデットコレクション増やそうとしているし。あれ……そう言えばミ……ミー……なんとかととヴィンセントは……?

それにヴィンセントは聖騎士だから、こう言うネクロマンサーたちの暗躍はいいのかしら……?いくら魔法解剖医が国家公務員として死霊魔法を使うのを認められているとはいえ……。

「ぐ……っ、ベリルめ、生きていたとは……っ」
「せっかくアマリリスをめぐるライバルが減ったと思っていたのに……!」
コイツらまで王太子殿下殺そうとしてたんだけども!?

「あ……うー、あぁ……っ」
あ。王太子殿下、気が付いたのね。何かアンデットみたいな呻き声上げてるけど……ちゃんと生きてるわよね……!?