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 初恋のひとと結婚できた姉は、いつだって幸せそうだった。



「お姉ちゃん、いま、幸せ?」

「うん。だって、あのひとと結婚できたから」

「……お姉ちゃんが幸せなら、私も幸せだなぁ」


 少し年の離れた姉に問いかけると、姉はそう言って心底幸せそうに笑った。

 その笑顔が本当に幸せそうで、その笑顔を見ているだけで私まで幸せな気持ちになった。

 幸せだ。大好きな姉が、大好きなひとと結婚ができて、こうして幸せそうにしている。同じ家で一緒に暮らした期間はあまり長くはなかったけれど、それでも私のことを大切にしてくれて、結婚して家を出ても会いに来てくれて、私をきちんとひとりの人間として扱ってくれる姉のことが、私は大好きだった。

 子供というのは、親にとって調停を掌握するための手段の一つに過ぎない。特に私の父にとって、私たちの意思なんてあってないようなもので、大切なのは自分の家がどうしたら帝に取り入れることができるかどうかくらいなものだった。

 だから、姉が結婚すると聞いたとき、私はきっと、姉は姉の好きなひとではない別の人と政略結婚をさせられるんだろう、と思った。初恋は実らない、と母は言う。それは、母もまた、実らなかった初恋がきっとあったのだろうということなのだと、この歳になってようやく理解するようになった。

 だからこそ、姉が大好きなひとと結婚できたことは、私に大いなる期待をもたらした。だって姉は、きちんと好きなひとと添い遂げることができるのだ。たとえそこに父の意図があるとしても、その意図とかみ合えば私だって好きなひとと結婚することができるのだ。