女の子というものはわからないもので……。
 僕を獲り合っているはずのムラ村さんと背伸さん。
 二人は気がつくと、大の仲良しになっていた。

「なぜだ……あの二人は恋敵にあたる存在なのに」

 うーむと唸りながら、凸凹コンビの後ろ姿を背後から見つめる。
 チビのムラ村さんに、モデル体型の背伸さん……。
 どちらも捨てがたい。

 落とすなら、どっちだ!?

 そうこうしているうちに、夏に入り、学校でも授業としてプールが始まった。
 しかし、僕は10歳になろうとしているのに、泳げない。
 だから近所の年下の子と一緒に、スイミングスクールへ通うことにした。

 身長は既に中学生ぐらいデカい奴が、幼児たちと一緒に習っているので、かなり目立つ。

「おいゴラァ! 童貞っ! ちゃんと泳げやぁ!」

 なんて、よく怒鳴られていたが、僕はポカーンとしていた。
 正直、クロールぐらいできれば、さっさと辞めようと思っていたからだ。

 通いだして、一か月ぐらい経ったころ。
 僕は少しずつだが、泳げるようになってきた。

 というか、短期間で身長が伸びすぎたせいで、水着はパツパツ。
 元々、子供用のサイズなので、キツくて仕方ない。
 特に股間にゆとりがない。

 ピーッ! と笛が鳴る。

 今日の練習が終わりを迎えたということだ。

 僕はプールサイドを、よたよた歩きだす。鼻をほじりながら。

「あー、疲れた。帰りに本屋で『フーミン』のグラビアでも立ち読みすっか」

 その時だった。

 ガンガンッ! ガンガンッ!

 と、隣りから何かを叩く音が聞こえてくる。

 ふと立ち止まると。
 そこには二人の少女がいた。

 ムラ村さんと背伸さんだ。
 プールサイドの隣りは、ガラス張りのスタジオがある。
 そこで、泳ぐ前にストレッチをするのだ。

 つまり、僕の次の時間に、この二人は泳ぎだすということだ。

 ガラス越しに何かを訴えている。

「や~い! 童貞ってカナヅチだったぎゃん!」
 そう言うのは、胸が全然発育していない、つるぺたのムラ村さん。
「童貞くん。まだ幼児クラスなの~ プフフ~」
 ムラ村さんに反して、こちらはだいぶ発達してらっしゃる。
 膨らみかけの乙ぱいということだ。
 僕と同じで、水着のサイズがあっておらず、胸部が少し苦しそうだ。

 まさか!? この二人……ずっと僕の泳ぐ姿を、見つめていたのか!?
 熱い眼差しで。

 ハッ!? なんてこった!?
 やはり僕は罪深い男だ。

 どちらかを選べないでいることを察した、ムラ村さんと背伸さんは、『二人で共有』することを決断したに違いない!

 小学生にして、ハーレムとはな。
 想像すると、股間に痛みを感じたので、前かがみでそそくさと、去っていった。