林間学校は、一学年全員が参加し、男女合わせて総勢300人ぐらい。
バスで目的地である大分県の九重山へと向かった。
よくあるキャンプ場で、僕たちが泊まるテントは既に設置済み。
ただ、悲しいことに、男女別々のグループで寝ることになった。
(クソ! 森盛さんがせっかく夜這いをしようと、頑張っているのに。中学校側が阻止してどうすんだよ!)
僕はイライラしながら、汗臭い野郎どもと、バッグをテントの中に放り投げる。
テントでしばらく待機していると、どこからか、スピーカーから音が流れてきた。
声の主はパワハラ先生だ。
『あ~ 今から晩ご飯を作りたいと思う。全員、炊事場に集まるように! 一秒でも遅れたら、殺す!』
なんて脅しをかけてきた。
僕たちは死にたくないので、猛ダッシュで炊事場へと向かう。
川の近くに炊事場はあった。
野菜や肉、米などは学校側が用意してある。
あとは僕たち生徒が、この素材を切ったり、焼いたりすればいいだけだ。
ここでようやく、意中の森盛さんと再会できた。
「童貞くん。一緒に作るっちゃ」
なんて微笑む。
「う、うん……」
僕には彼女が『一緒に今晩、赤ちゃんを作るっちゃ♪』に聞こえた。
(よし。ここでカッコイイ料理男子であることをアピールして、森盛さんの初めてもスイーツとして食べちゃおう)
と意気込む。
野菜や肉をカットするのは、割と簡単だった。
問題は、調理する際、自宅のようにガステーブルがないので、かまどに薪を入れて火をつけることだ。
勉強として、先生たちから原始的な火おこしを命令される。
一々、着火するため、近くに落ちていた木々を使い、弓ギリ式発火具を作成。
かまどに真っ赤な炎が上がるのに、一時間以上もかかって、僕も森盛さんも疲弊していた。
「はぁはぁ……疲れたね、童貞くん」
「うん」
確かにこの暑さの中、ジャージ姿でコキコキするのは地獄だ。
どうせコキコミするなら、森盛さんの細い脚で天国を味わいたい。
初めてのかまどに、みんな苦戦していた。
それは煙だ。
竹で作った火吹きを使うのだけど、その際、白い煙が漂い、目にしみる。
僕たちのグループが一番手こずっていた。
手際の良い人たちは、既に料理を作り終えて、食べ始めた。
6人ぐらいのグループだったけど、みんな空腹だし、目にしみるし、かまどに近づくのを嫌がった。
だが、真面目な森盛さんは違った。
一生懸命、小さなお口で「ふぅ~ ふぅ~」と火に風を送っている。
僕はその姿を少し離れたところで見ていた。
煙が目にしみて痛いし、後ろから森盛さんのヒップが堪能できるからだ。
すると、担任の美人先生が僕の頭を叩く。
「いたっ!」
「痛いじゃない! 童貞! あんた女子の森盛にだけ、やらせる気? あんたも一緒にやりなさい!」
「はい……」
この時、僕は先生が『森盛にだけヤラせる気? あんたも一緒にヤリなさい』と聞こえた。
かまどに近づくと、小さな森盛さんが健気にも尺八しているではないか。
「ふぅ~ ふぅ~!」
僕が隣りに座ると、その姿を見て笑う。
「あ、童貞くん。手伝ってくれるんやね? 一緒に咥えようよ!」
「え!?」
僕は思わず、耳を疑った。
(くわえる? 一体なにを!?)
「この大きな竹を口にあてて、ふーふーするとよ。男の子の童貞くんなら、いっぱい出せるやろ?」
「なんだって!?」
森盛さんが誘っている。
『いっぱい出せる』
と。
確かにそっちの体力は、限界を知らない僕だ。
僕は森盛さんが差し出した、長くて太い竹を受け取り、生唾を飲み込む。
(これが数十分も森盛さんがふぅ~ ふぅ~ した尺八くんか。よし、僕もたっぷりと風を吹き込もう)
大きく口を開いて、吸引口にかぶりつく。
そして、思い切り息を吐きだす。
「ぶぉ~ ぶぉ~!」
僕の勇姿を見て、森盛さんが手を叩いて喜ぶ。
「さすが、男の子っちゃ! 童貞くん、すごい! じゃあ今度は私に交代やろ?」
「うん」
僕の唾液まみれの竹を受け取り、今度は森盛さんが風を吹き込む。
「ん……ふぅ~」
吹き込む風の力が弱まっている。
しかし、彼女はやめる素振りがない。
むしろ僕が隣りに座ってからというものの、元気になっている。
肩で息をして、汗だくになる森盛さん。
額の汗をタオルで拭いながら、僕に微笑む。
「はい。次は童貞くんの番やろ」
「うん」
二人で交代しながら続けること、数十分。
どうにかして、カレーライスが完成した。
テーブルに皿を並べながら、森盛さんは喜んでいた。
「童貞くんが助けに来てくれて、本当に良かったばい。私一人ならちゃんとできなかったもん」
「え……」
「初めてだったから、自信なかったんよ。ありがとね」
はっ!? まさか!
聞いたことがあるぞ……大人の愛し方の一つに、尺八というやり方があると。
お口でレロレロすると。
「初めて」「自信がなかった」「一人ならちゃんとできなかった」
そうか! 森盛さんが僕に伝えたいのは、今までのは前戯。
続きである本番は……この後、夜這いで。
ということに違いない!
僕は体力をつけるために、カレーを三杯もおかわりしておいた。