詩集 声にならない言葉を君に

暑いのか?

初夏の日差しの中、彼は問う。

別にと私は答える。

顔が赤くなっているのはわかる。

おでこに手のひらを当てて体温チェックされたせいで体温は確実に上昇した。

見つめられただけで体温が1℃程度は上がる。触れられたら体感温度は3℃上がる。

おまえのせいだと言いたいけど、言えない。

気配りできるそんな優しいところが好きなんだけどな。
雨の中、せつなくて、悲しくて、涙が出る。

雨は涙を隠す隠れ蓑。

雨にまぎれて泣いてもいい?

雨のせいにして涙はなかったことにしよう。

涙じゃなくて、雨粒だから、カウントしないでね。

上を向くと少し涙が止まる気がする。

涙が流れそうになったら、上を向こう。

ずぶ濡れになって全部忘れてしまおう。

これが私らしい立ち直り方。

雪が灰色の空から降ってくる。

まるで無限に広がる紙吹雪。

触れそうで触れられない。

冷たい頬に手を当てる。

自分の存在を感じる瞬間。

粉雪は私を有限なものと感じさせてくれる。

無意味じゃなくちゃんとそこに存在していると。



卒業したら、もう見ることもできなくなるね。目が合うことも、声を聞くこともできなくなるね。

一度も話したこともないけど、卒業アルバムでずっと会うことはできるね。

写真も持っていなかった私が、唯一君の面影を見ることができる卒業アルバム。

永遠に片思いだし、気持ちを伝える勇気はないけど、卒業アルバムできっと何度も君に会えるね。
辛くて苦しくて、吐き出すことのできない気持ち。

誰かと共有したくて、誰にも言えない気持ち。

悲しくて自分の存在意義を問う。

私は必要とされているのか、疑問に思う。

無意味な過去は修正できなくて、

描く未来も今は見えない。

余命◯日だとしたら、何をしよう。

短いからこそやるべきことが見えてくる。

ずっと生きていたら何も考えなかっただろう。

限られた時の中で、私は何をすればいいのか。何を遺せるのか。

答えは出ない。

神様は世界を平等にしないらしい。
朝顔が咲く時間から ひまわりが咲く時間をいつも君と過ごしている。

特別な感情なんてないふりして過ごしている。

今日は花火を見る時間まで一緒に過ごす。

今日こそは本音を言えたらいいな。

夏風が私をそっと押してくれる。
君の視線の先には私ではない人がいる。

そんなことはとうにわかっていた。

君からの卒業をしなければいけない。

懐かしい校舎も黒板も下駄箱も全てお別れ。

好きな人がいることはわかっていた。

君から卒業して私の視線の先に別の誰かがいる日を願って。
ため息をつくと幸せが逃げるらしい。

でも、わざとため息をついてみる。

いい感じになる二人を祝福できそうにないから。

私にもこんな笑顔を見せてくれたらいいのに。

またため息をついてしまった。