*
とある日の昼下がり。俺は大学の控室でドーナツをかじりながら作品の下絵を描いていたら、同じゼミ友の松岡慶太と森嶋玲央が来た。
「よっ」と俺の画材で占拠したテーブル席に着く二人。
「柴ヤン、うまそうなの食うとるやん」と森嶋。松岡からは、「あれ、お前ドーナツ好きだったっけ?」となかなか鋭い突っ込みが。
「ここのは美味いから食ってるだけ」と返すと、「何か心境の変化でもあったか?」と松岡は更に鋭く突っ込むので噎せそうになった。
「何や、柴ヤン。図星か?」とからかうように森嶋が言う。咄嗟に「いや、そんなんじゃないし」と返すが、便乗した松岡が「わかった! さては彼女できたな」と容赦なく切り込んでくる。
「え、ほんま?」と森嶋。反応に困ってフリーズする俺。
「そうか、とうとうシバにも春が来たか」と松岡は勝手に話を進める。
「だから違うって」
「いや、絶対そうだ。だってさあ……」
松岡が俺の下絵を指さして言った。
「この子。誰?」
「あ……」
しまった。彼女を思いながらドーナツを食べていたら、つい……創作意欲が湧いて、本心がダダ漏れになっていることに気づかなかった。
「お前、普段景色しか描かないじゃん。人物描くのなんて珍しいなと思って」
「う……だからこれは、次の課題で――」
「課題言うてもなあ。ほぼ自由画やなかったか? テーマは“春”やろ? だいたい、ワシらゼミ同じやし。柴ヤン、これはあからさま過ぎちゃうか?」
クソ、みんなして俺を弄りやがって。そう思うものの、俺は何も言い返せない。
「まあ、僕としてはいい傾向だと思うよ。シバの絵は確かに繊細で美しいタッチが特徴だけど、どこか無機質っていうか。味気ないっていうか。何かが足りないって言われる理由はそこにあると思うんだよな」
「ほんまそれな。柴ヤン、ワシら褒めてんで」
どうだか。
「そうそう。春だねえ」
この先もっと弄られるのは必至だが、俺はこの春にどこか期待しているのも事実だった。今までとは何かが違う、この春に。
とある日の昼下がり。俺は大学の控室でドーナツをかじりながら作品の下絵を描いていたら、同じゼミ友の松岡慶太と森嶋玲央が来た。
「よっ」と俺の画材で占拠したテーブル席に着く二人。
「柴ヤン、うまそうなの食うとるやん」と森嶋。松岡からは、「あれ、お前ドーナツ好きだったっけ?」となかなか鋭い突っ込みが。
「ここのは美味いから食ってるだけ」と返すと、「何か心境の変化でもあったか?」と松岡は更に鋭く突っ込むので噎せそうになった。
「何や、柴ヤン。図星か?」とからかうように森嶋が言う。咄嗟に「いや、そんなんじゃないし」と返すが、便乗した松岡が「わかった! さては彼女できたな」と容赦なく切り込んでくる。
「え、ほんま?」と森嶋。反応に困ってフリーズする俺。
「そうか、とうとうシバにも春が来たか」と松岡は勝手に話を進める。
「だから違うって」
「いや、絶対そうだ。だってさあ……」
松岡が俺の下絵を指さして言った。
「この子。誰?」
「あ……」
しまった。彼女を思いながらドーナツを食べていたら、つい……創作意欲が湧いて、本心がダダ漏れになっていることに気づかなかった。
「お前、普段景色しか描かないじゃん。人物描くのなんて珍しいなと思って」
「う……だからこれは、次の課題で――」
「課題言うてもなあ。ほぼ自由画やなかったか? テーマは“春”やろ? だいたい、ワシらゼミ同じやし。柴ヤン、これはあからさま過ぎちゃうか?」
クソ、みんなして俺を弄りやがって。そう思うものの、俺は何も言い返せない。
「まあ、僕としてはいい傾向だと思うよ。シバの絵は確かに繊細で美しいタッチが特徴だけど、どこか無機質っていうか。味気ないっていうか。何かが足りないって言われる理由はそこにあると思うんだよな」
「ほんまそれな。柴ヤン、ワシら褒めてんで」
どうだか。
「そうそう。春だねえ」
この先もっと弄られるのは必至だが、俺はこの春にどこか期待しているのも事実だった。今までとは何かが違う、この春に。



