悩みに悩んだ末、俺は売店で見つけた雑誌の中から、ある一つのアクセサリーブランドの記事に見入った。

“Eternity”と書かれたエンゲージリングの特集のページ。

俺はまだ学生で、別に梨歩とは婚約をしているわけでもない。それなのに、何故か妙にそのページだけに惹きつけられた。

0.2カラットのダイヤが一粒、サイドに屑ダイヤが散りばめられた、デザイン自体はとてもシンプルなプラチナリング。
純度は最高ランク。

その隣には希少価値の高いピンクダイヤがどうのとか、有名芸能人がデザインした限定品のものも掲載されていたが、俺は最初に見たリングの詳細が知りたいと思い、そのショップのサイトにネット検索をかけた。


(SAKURA、か)
梨歩の名字が“桜ヶ丘”だったからだろうか。
何となく運命的なものを感じた。桜のような薄桃色を使っているわけではないが、その響きだけで優しいパステルピンクが色づいたように華やいで見えるデザインのものばかりだった。

ファッションリングのことを思うと、当然桁も違う。まして、俺はファッションリングというものにすら縁が無い生活を送っていたし、何より女の子にプレゼントをするという経験すら梨歩と付き合うまで一度もなかった。そんな俺が、いきなりエンゲージリングなんて。そりゃ姉貴もドン引きするはずだ。

WEBでも申し込みができるらしい。
学生の身分でやることではないと思うが、俺は意を決して見積もりを依頼した。