「すみませんっ……」

途中から受付の人も手伝ってくれたが、幸い、急いで拾ったこともあって他人に見られてはいけないような個人情報が書かれたものは誰にも見らずに済んだ。

「どうぞ」

拾ってもらったものを受け取りながら感謝すると、笑顔で「それはの写真なんですか?」と聞かれた。
彼女から受け取ったものは確かに写真で中学二年生に幼馴染達に会ったあの日、陽がこっそり撮っていたものだった。

送られてきた時の私の表情は、いつの間に撮ったのだという驚きと自分も撮っておけばよかったという後悔で何とも言えない顔をしていただろう。
しっかり皆が映っている写真を撮っておいてくれたことを何度も感謝した。
そして、ちゃっかり印刷しておいたものを常に持ち歩いている。

「中学生の頃の写真です」
「まぁ皆さん大人っぽかったので成人式の後とかの同窓会かと思いました。でも、中学生でこんな風に男女関係なく集まって遊ぶなんて仲が良いんですね」
「えっと……私の学校自体が上下関係すら緩かったので同学年だと尚更仲が良くて。今日もこれから会う予定があるんです」
「へぇ~。私の子どもは女の子なんですけど『男子は馬鹿だ』って言って女の子とばっかり遊んで、この間は男の子と喧嘩までしたんですよ。弟の友達にもつっけんどんでもー怒ってばっかりです」

頬に手を当てて「皆と仲良くしてもらいたいものです」という彼女の圧に押されながら相槌を打って、話し上手な人だなと思った。
まだ苦手意識は消えないが、仕事柄だんだん慣れてきた。
少なくともこれについて悩んでいた頃よりは上手くなっているはず。

「あ、関係ないこと話してしまってすみません。ついつい。それでは再登録しますね」

約五分後、無事に再登録を終えて本を借り、陽の元へ戻る。

「遅かったな」
「再登録しなきゃいけなかったのと、受付の人と話してた。お待たせしました」

お辞儀をすると顔を上げたすぐそばにニヤッと笑った陽がいた。

「待ってないです。槭のこと目で追っかけてたから」
「え……」
「半分冗談だよ。本見て待ってたから大丈夫」
「何、半分って」
「ん?半分は半分だよ」
「はぐらかさないで」

いつもみたいに私の好きな笑顔を見せて「内緒」という陽をこれ以上問い詰める気にはならなかった。
陽になら別に見られてても構わないのに、というのは心の中で言っておいた。

「もうそろそろ時間だけどなんか用事ある?」
「ううん。皆は遠くから来るから早めに着いておいた方がいいと思う」
「それもそうだな。じゃ、行くか」

図書館を出ると日はすっかり沈みきって空は暗かった。
それでも、暗闇に浮かぶ星の輝きが夜空を彩る。
そこに永遠と広がっていそうな暗い夜を美しいものにしてくれる。
確かに希望を与えてくれる。
その星光は途切れることなく、いつまでも煌々と光り輝いていた。