まぁつまり、私じゃ知識不足で陽の探している本を見つけられそうにはないということ。
私は私で独特な空気と好きな本に癒されていよう。
タイトルと表紙に目を惹かれた一冊の本を持って席に座る。
休日でも同じように座っているのは七人程度。
本棚の前にいるのは見える限りで陽を除いて五人。
小さくなってしまったのも頷ける人数だ。
昔、私がよく座っていた席があった場所には本棚があり、座席数も減っていた。
社会人として仕事に追われていたらいつの間にか色んな変化があって、昔の私達が過ごした思い出の場所が消されていく。
やっぱり寂しいけど、ちゃんとわかっている。
ちゃんと落とさず抱えている。
あの日に陽に教えてもらったこと、覚えてるから。
まだ幼くて悩んでいた私がいつも座っていた席があった場所、そこにある本棚から顔を出す。
夕方、沈みかける太陽の最期の光を受けて空気中に漂う埃が照らされていた。
その中で浮かべる不安げな顔。
つい頬が緩んで心の中で語りかけた。
大丈夫。
貴方達は私が抱きしめて未来まで一緒に持っていってるよ。
届くはずも、そもそも想像だということもわかっているけれど、話しかけたくなる。
もう一度"大丈夫だよ"と言ってあげると彼女はこくんと頷いて本棚に隠れてしまった。
それでも目を離さずにはいられなくて、本を開きながら彼女が見えなくなった辺りを見ていると、肩にポンッと手がのった。
「槭。何見てんの?」
既に求めていた本が見つかったらしい陽は隣の席に座って頬杖をつきながら私を見る。
「声掛けてんのに気付かないしさ」
「ごめん。懐かしいなぁって耽ってた」
「ま、確かにな」
のんびり話したりそれぞれ本を読んだりしていたらあっという間に図書館を出なくてはいけない時間になった。
たまたま手に取った本だが意外と好みだったので貸出受付をする。
「では、貸出カードを見せていただけますか」
カードを出して受付の女性に渡す。
「あの、申し訳ありません。三年以上たっていると再登録が必要なのですが……」
カードに書かれた日付を見ると最後に利用したのは四年が経っていた。
もうそんなに経ったのかとしみじみしながら、再登録の手続きをする。
「身分証明書の提示をお願いします」
大切なものをまとめて入れている袋から保険証を出す。
「はい。確認しました。最後にこちらにご記入ください」
そう言われてタブレットに名前を書いて渡そうとしたとき、手が滑ったのか保険証を入れていた袋を落としてしまい、床に中のものが散乱してしまった。
私は私で独特な空気と好きな本に癒されていよう。
タイトルと表紙に目を惹かれた一冊の本を持って席に座る。
休日でも同じように座っているのは七人程度。
本棚の前にいるのは見える限りで陽を除いて五人。
小さくなってしまったのも頷ける人数だ。
昔、私がよく座っていた席があった場所には本棚があり、座席数も減っていた。
社会人として仕事に追われていたらいつの間にか色んな変化があって、昔の私達が過ごした思い出の場所が消されていく。
やっぱり寂しいけど、ちゃんとわかっている。
ちゃんと落とさず抱えている。
あの日に陽に教えてもらったこと、覚えてるから。
まだ幼くて悩んでいた私がいつも座っていた席があった場所、そこにある本棚から顔を出す。
夕方、沈みかける太陽の最期の光を受けて空気中に漂う埃が照らされていた。
その中で浮かべる不安げな顔。
つい頬が緩んで心の中で語りかけた。
大丈夫。
貴方達は私が抱きしめて未来まで一緒に持っていってるよ。
届くはずも、そもそも想像だということもわかっているけれど、話しかけたくなる。
もう一度"大丈夫だよ"と言ってあげると彼女はこくんと頷いて本棚に隠れてしまった。
それでも目を離さずにはいられなくて、本を開きながら彼女が見えなくなった辺りを見ていると、肩にポンッと手がのった。
「槭。何見てんの?」
既に求めていた本が見つかったらしい陽は隣の席に座って頬杖をつきながら私を見る。
「声掛けてんのに気付かないしさ」
「ごめん。懐かしいなぁって耽ってた」
「ま、確かにな」
のんびり話したりそれぞれ本を読んだりしていたらあっという間に図書館を出なくてはいけない時間になった。
たまたま手に取った本だが意外と好みだったので貸出受付をする。
「では、貸出カードを見せていただけますか」
カードを出して受付の女性に渡す。
「あの、申し訳ありません。三年以上たっていると再登録が必要なのですが……」
カードに書かれた日付を見ると最後に利用したのは四年が経っていた。
もうそんなに経ったのかとしみじみしながら、再登録の手続きをする。
「身分証明書の提示をお願いします」
大切なものをまとめて入れている袋から保険証を出す。
「はい。確認しました。最後にこちらにご記入ください」
そう言われてタブレットに名前を書いて渡そうとしたとき、手が滑ったのか保険証を入れていた袋を落としてしまい、床に中のものが散乱してしまった。