スポーツドリンクは口の中が気持ち悪くなるほど少ししょっぱく、後味が甘かった。
ただ、しばらく何もいれていなかった体が待ってましたと言わんばかりに一瞬で分解し、隅々まで運ぼうとしているような、染み渡る感覚がした。
飲んでも吐き気が起きそうにはなかったので、もう二口飲んで氷枕を額に置き、目を閉じる。
あまりにも早すぎるので気のせいではあると思うが、ほんの少し頭痛が和らいだ気がした。
おかげでようやく眠気が襲う。
いつの間にか寝ていて、久しぶりに何度も見てきた夢を見た。
小学一年生の頃から見るようになった夢。
大人は誰もいない、幼馴染達だけの白い空間で好きなように遊ぶ皆の中に私もいる。
まだ保育園児の姿でパズルで遊び、笑う私が。
その横には親友のように仲の良かった女の子もいた。
他にも炬燵の中で寝ていたり周りを走り回っている子。
近くのテレビで戦隊ヒーローを見ている子もブロックや人形で遊んでいる子もいた。
勿論、現実でこんな光景を見たことは無い。
完全に私の空想。
それも、白い部屋で出口がないのはこの時間が永遠に続けばいいという思いによるもの。
彼らは私の想像の世界で閉じ込められているんだ。
私の夢、想像なら扉を作ってあげることもできるのだろうけど、外へ出したくない思いが打ち勝ってしまう。
ずっとこうやって一緒に遊んでいたい。
変わることのない姿で変わることのない関係をもって、変わることのない笑顔を見ながら。
たとえそれが想像の世界の話であるとわかっていても願う。
「いかないで……」
そんな悲痛な叫びのような自分の声で目が覚めた。
頬には涙の流れた跡がある。
何度も繰り返す夢と涙。
今の私にとっての夢のように幸せだった保育園での日々。
優しくて温かくて、今では何もかもが煌めく思い出。
私の大好きな場所。
大好きな時間。
大好きな幼馴染の皆。
時空を超えることができるのなら私は絶対にあの時間へ戻る。
私が一番戻りたい場所。
それが皆のいる温かい日々だ。
もう戻れないけれど。
私の代は親の都合で同じ小学校に行けなかった子達、途中で転校した子達が多かったから日本各地に幼馴染が散り散りになっている。
会おうと思っても会えないし、彼らには新しい場所での新しい友達がいる。
そう思うと胸がキュッと締め付けられた。
きっと戻りたいと思っているのは、過去に縋っているのは私だけ。
あの日々をずっと心にしまって忘れずにいるのは、思っているのは私だけ。
そんな私も、もう少しで高校生になって幼馴染が近くにいる中学校生活も終わる。
進まなければ、いけなくなる。
無事に大人なって生きていけるのかも不安だけれど、何よりも怖いのは……幸せだと感じた日々を置いて前に進まなくてはいけないことだ。
過去に縋らずに生きていくことへの恐怖。
それなのに時間は刻一刻と進み、私を追い詰める。
今に、過去に留まって逃げたい。
無事に大人として社会で生きていけるのか。
大好きな時間に背を向けて一歩ずつ歩んでいかなければいけないのか。
今抱える大きな悩みの種は結局、過去の幸せな日々に縋ったまま未知で、先の見えない未来に進む勇気がないということ。
私の中での最大の敵は、いつだって未来という目に見えない巨大なものだった。
ただ、しばらく何もいれていなかった体が待ってましたと言わんばかりに一瞬で分解し、隅々まで運ぼうとしているような、染み渡る感覚がした。
飲んでも吐き気が起きそうにはなかったので、もう二口飲んで氷枕を額に置き、目を閉じる。
あまりにも早すぎるので気のせいではあると思うが、ほんの少し頭痛が和らいだ気がした。
おかげでようやく眠気が襲う。
いつの間にか寝ていて、久しぶりに何度も見てきた夢を見た。
小学一年生の頃から見るようになった夢。
大人は誰もいない、幼馴染達だけの白い空間で好きなように遊ぶ皆の中に私もいる。
まだ保育園児の姿でパズルで遊び、笑う私が。
その横には親友のように仲の良かった女の子もいた。
他にも炬燵の中で寝ていたり周りを走り回っている子。
近くのテレビで戦隊ヒーローを見ている子もブロックや人形で遊んでいる子もいた。
勿論、現実でこんな光景を見たことは無い。
完全に私の空想。
それも、白い部屋で出口がないのはこの時間が永遠に続けばいいという思いによるもの。
彼らは私の想像の世界で閉じ込められているんだ。
私の夢、想像なら扉を作ってあげることもできるのだろうけど、外へ出したくない思いが打ち勝ってしまう。
ずっとこうやって一緒に遊んでいたい。
変わることのない姿で変わることのない関係をもって、変わることのない笑顔を見ながら。
たとえそれが想像の世界の話であるとわかっていても願う。
「いかないで……」
そんな悲痛な叫びのような自分の声で目が覚めた。
頬には涙の流れた跡がある。
何度も繰り返す夢と涙。
今の私にとっての夢のように幸せだった保育園での日々。
優しくて温かくて、今では何もかもが煌めく思い出。
私の大好きな場所。
大好きな時間。
大好きな幼馴染の皆。
時空を超えることができるのなら私は絶対にあの時間へ戻る。
私が一番戻りたい場所。
それが皆のいる温かい日々だ。
もう戻れないけれど。
私の代は親の都合で同じ小学校に行けなかった子達、途中で転校した子達が多かったから日本各地に幼馴染が散り散りになっている。
会おうと思っても会えないし、彼らには新しい場所での新しい友達がいる。
そう思うと胸がキュッと締め付けられた。
きっと戻りたいと思っているのは、過去に縋っているのは私だけ。
あの日々をずっと心にしまって忘れずにいるのは、思っているのは私だけ。
そんな私も、もう少しで高校生になって幼馴染が近くにいる中学校生活も終わる。
進まなければ、いけなくなる。
無事に大人なって生きていけるのかも不安だけれど、何よりも怖いのは……幸せだと感じた日々を置いて前に進まなくてはいけないことだ。
過去に縋らずに生きていくことへの恐怖。
それなのに時間は刻一刻と進み、私を追い詰める。
今に、過去に留まって逃げたい。
無事に大人として社会で生きていけるのか。
大好きな時間に背を向けて一歩ずつ歩んでいかなければいけないのか。
今抱える大きな悩みの種は結局、過去の幸せな日々に縋ったまま未知で、先の見えない未来に進む勇気がないということ。
私の中での最大の敵は、いつだって未来という目に見えない巨大なものだった。