「り、おな」

そう言った瞬間、目元を覆っていた手はどけられ、その手は私を後ろから抱きしめた。

「槭、目開けていいよ」

陽の声がして恐る恐る目を開ける。

そこには目を閉じる前とは異なる、衝撃の光景があった。

「なんで……」

私を包むように、ここにいるはずのない人達が陽を中心に笑みを浮かべて私を見ている。

彩花(あやか)花菜(はな)美奈(みな)未奈美(みなみ)未央(みお)小夜(さや)柚希(ゆずき)千明(ちあき)愛良(あいら)梨乃(りの)淡河(おうご)樹希(たつき)右京(うきょう)隼大(はやた)(けい)欣人(きんじ)悠翔(ゆうと)(ゆう)、高雅。

そして、今も私から腕を離さず抱きしめてくれている、里緒奈。

夢を見ているのかと錯覚してしまうほど驚いた。

だって、遠く離れた私達にはお金も時間もなくて、もうみんなで集まることも話すこともできないと思っていたから。

またねと言って別れた人もいるけれど、きっともう会えないんだろうと心の中で諦めてしまっていたから。

卒園アルバムの写真を見て今どうしているだろうと、聞けずに大人になっていつの間にかお互いのことを忘れていくんだと思っていたから。

だけど、私を置いて未来に向かって進んでいくんだと思っていた人たちは、ずっと思い出に縋りついていて立ち竦んでいた私の目の前にいる。

私の妄想でも夢でもなくて、紛れもなくそこにいる。

ボロボロと涙が流れた。
止めようと思っても止まらない。

必死に涙を拭う私を里緒奈は黙って見ていた。
ただ、私の抱きしめる腕の力は強くなって、それが涙を堪えているように思えて更に涙を誘う。

「陽太が私達一人一人に連絡してきたの。集まってくれないかって」

里緒奈の言葉に陽を凝視する。

「どうして……」
「里緒奈と話したいかと思って……。あと、俺も皆に会いたかったし、皆も会いたいなって昔から言ってたから無茶を承知で連絡した」
「そしたら皆、見事に集まったってわけ」

陽は照れくさそうに言い、それに里緒奈が付け加えた。

止まらなかったはずの涙は上手い具合に物事が進んで皆がここにいることに対する驚愕でサッと止まってしまった。