約束をしていないとなれば聞きにくいのは陽も同じだと思う。

距離を置いた後、関係にひびが入る気がして、陽と話すようになってから今日までの出来事が全て夢だったんだと自分を必死に抑え込むのが目に見える。
冬休みが明けて元通りになっても会えなかった分、近づこうとしてしまいそう。

考えなければ不安に思わなくて済むのに、先を考えないわけにはそれこそ不安が募って。

会ってしまえばさらに距離を置きたくなくなってしまうから、こうしてメールで伝えようとしているのに文が考えられない。
体全体で距離を置くことを嫌がってる。

だって……私を見つけてくれた。
陽なら他に素敵な子がたくさんいるというのに自分の時間を私のために使ってくれた。
私の恐怖も努力も葛藤も全部くみ取ってくれた。
私が無意識にしていた自分に対する扱いを感じ取ってもっと私を大切にしていいと何度も言ってくれた。

私の中での存在が大きくなるには十分な優しさを陽はくれている。

「どうしよう……」

常に頭の中心にいる陽のことが勉強をすれば多少ズレてくれるかと思ったが、陽と勉強したところばかりで集中しようと頬を叩いても陽の顔がチラつく。

早くしないと、こうやってウダウダ考えて冬休みが終わっちゃう。

一度、紙に書いたら考えもまとまって不愉快にしないような文が思いつくかもしれない。

そう思っていらない紙はないか探しているとまたタイミングを見計らったようにスマホが通知を知らせた。

静かな部屋に響くほど大きい音にびっくりしすぎて声も出ず、本棚に頭をぶつけそうになる。

「あぶなっ」

思わず声を出した拍子に違う方向にバランスを崩して机に寄りかかった。
足を少し捻った程度で済んだことにホッとしてため息をつく。
捻った足に体重をかけないように意識しながら椅子に座って私を驚かせた通知を開いた。

案の定というか、どこからか監視されているんじゃないかと思うほどにぴったりなタイミングでの陽からのメール。

[冬休みってなんか予定ある?]

お辞儀をするウサギと共に送られてきた簡素な一文。

メールをしてて気がついたが、陽は意外とスタンプ使いがちだ。
あと、ウサギとか可愛いもの多くて正直すごく可愛い。

スタンプから文に視線をずらして思う。

なんかって聞かれても家族の誕生日とかも言うべきなのかわからない。
どこまでが陽の知りたい予定なんだろう。

相手がどの範囲の情報を知りたいのかわからないからと次の言葉を迷うのも会話が成立しない理由なのかもしれない。

とりあえずカレンダーのアプリをスクリーンショットして送っておいた。