凍てつく空気が吹く冬になった。

外に出るにも防寒着は必須。
部屋の中にいても暖房や布団が手放せない。

陽にリオナのことを話したあの日は図書館の帰りみたいに『またね』と言って別れた。

ただ、帰って少し休憩してからスマホを開いたところ、陽が連絡先を繋げたという通知が入っていた。
見間違いか何かかとすぐさまアプリを開くと確かに連絡先が交換されていて思わず出した声に風弥や愛生に「うるさい!」と何倍も大きい声量で怒られ、『君達の方が十分煩いよ』と悪態をつきながら陽の連絡先を登録する。

今思えば何故毎日のように会っていたというのに連絡先も交換せず陽の電話番号も知らずに遊ぶ約束をしたのか。

両親からは連絡用としてスマホを渡されたのに、その役割は私がスマホを必要としなさ過ぎて果たされていない。
さっきだって届いた通知の中で一番古かったのは四日前。
四日間全く触れていなくて充電は五パーセントだった。

スマホとにらめっこして約十分。

友達と連絡先を交換したことがない一度しかない私。
その一度も向こうから先に連絡をくれていた。

陽からの連絡を待とうと勉強机の前で待機するも、中々こない。

私から送ればいいのだけど、ボタン一つが押せない。
それも初めにスタンプで済ませてしまうのも礼儀としてどうなんだろう、とか悶々と考えて無難な文章に落ちついたのに。
世の中のスマホを持つ人はこれを軽々とやってのけてしまうのだからすごい。

流石に諦めて勉強に集中することにした。
が、普段の勉強より明らかに進みが遅い。

勉強をしながらどこかで連絡がきてないか、考えている。
頭の中を何かに占領されているみたいだ。

「うぅ……だからメールって嫌いなのに」

締め切った暖房のついていない寒い部屋で呟く。

お互いの生活リズムが違うと会話が進まない。
やることもあれば、寝る時間も全然違う。

表情も見えないし、相手が何を思っているのか文面から読み取るのは至難の業。
面と向かって会話するよりずっと難しい。

机に顔をつけてため息をついた、その時。
机に置いてあったスマホのメール通知を伝える振動が頬にまで伝わった。

予想通り、陽だった。

[急に連絡交換してごめん。今更、こっちの方が楽かと思って]