ゆっくり陽に引かれながらよろよろ歩いて体感十分。
団地にあるような公園よりはずっと大きいけれど、遊具はブランコだけ。
芝生の広がる静かな公園だった。
お昼の時間だからか人は全くいない。
「槭、座りな」
ベンチの前まで誘導されてそのまま座る。
座ると少しだけ吐き気が治まって立っているよりずっと楽。
「飲み物いる?」
小さく首を横に振る。
それだけでも目が回って倒れそうになった。
「あっぶな!」
倒れそうになった私の体を支えて「ヒヤヒヤすんなぁ」と隣に座った。
「ほら、肩寄りかかっていいから」
お言葉に甘えて頭を預けるとさらに楽になる。
「槭は人が多い場所苦手なのか」
「苦手。色んなにおい、とか音、と情報に、気持ち悪く、なる」
「情報?」
「人の、表情。ぶつからないように、って歩いてると、どうしても見え、ちゃってその、人が何思ってる、のか何となく、わかる」
自分とは無関係の所でも人同士がぶつかったり、常識のない人を見ると私自身もいろいろ考えてしまうし、それを見ていた色んな人の不満や呆れの感情が一気に入ってきて頭がパニックを起こす。
その瞬間を見てしまえば、すぐに吐き気を催してしまう。
私にとって人が多い場所はそれだけ色んな人の思いや感情を無意識に受けとってしまう場所でもあるんだ。
「それは辛いよな。休んで動けそうだったら今日はもう帰ろう」
「で、も陽。フラペチーノ飲み、たいって言ってた」
「そんなん今日じゃなくていい。槭を無理させてまで飲みたいフラペチーノってなんだよ」
笑って、大丈夫だという雰囲気を作ろうとしているのが伝わる。
泣きそうになった。
せっかく誘ってくれたのに二時間で家に帰る羽目になるなんて思わなかっただろう。
こんなに気を遣わせて申し訳ない。
「ごめんね、陽」
「何が?」
「お休み、潰して誘ってくれた、のにこんなことに、なって」
「……今の謝罪取り消して。俺、誘ってよかったよ。槭から沢山プレゼントもらった」
私は何もしてない。
私の方こそ色んなものをもらった。
槭のボールペンも鮫のぬいぐるみも、本について話せる機会も、家族以外の誰かと一緒に休日を過ごすことも。
全部プレゼントだ。
「今日来てくれてありがとう」
堪えていた涙が溢れた。
陽の服を濡らさないように起き上がる。
「何で泣いてんの」
「だって……陽、優しすぎる」
"嬉しい"が涙になって頬を伝う。
「優しくないよ。俺の体育祭で先輩たちに怒鳴ったろ」
「あれは正しい、ことだと思う」
「どうかな。明日学校に行ったら俺が悪者にされてるかも」
「なんで?」
陽がしたことは正しいはずだ。
相羽さんだって、殺意ともいえる感情を向けていたのにあんなに反省して私に謝った。
きっと陽を変に広めはしない。
「花観先輩の方だよ。着いてきただけだろうけど、相羽先輩の意思とか関係なしに俺を貶めようとするかもしれない」
「そんな……」
団地にあるような公園よりはずっと大きいけれど、遊具はブランコだけ。
芝生の広がる静かな公園だった。
お昼の時間だからか人は全くいない。
「槭、座りな」
ベンチの前まで誘導されてそのまま座る。
座ると少しだけ吐き気が治まって立っているよりずっと楽。
「飲み物いる?」
小さく首を横に振る。
それだけでも目が回って倒れそうになった。
「あっぶな!」
倒れそうになった私の体を支えて「ヒヤヒヤすんなぁ」と隣に座った。
「ほら、肩寄りかかっていいから」
お言葉に甘えて頭を預けるとさらに楽になる。
「槭は人が多い場所苦手なのか」
「苦手。色んなにおい、とか音、と情報に、気持ち悪く、なる」
「情報?」
「人の、表情。ぶつからないように、って歩いてると、どうしても見え、ちゃってその、人が何思ってる、のか何となく、わかる」
自分とは無関係の所でも人同士がぶつかったり、常識のない人を見ると私自身もいろいろ考えてしまうし、それを見ていた色んな人の不満や呆れの感情が一気に入ってきて頭がパニックを起こす。
その瞬間を見てしまえば、すぐに吐き気を催してしまう。
私にとって人が多い場所はそれだけ色んな人の思いや感情を無意識に受けとってしまう場所でもあるんだ。
「それは辛いよな。休んで動けそうだったら今日はもう帰ろう」
「で、も陽。フラペチーノ飲み、たいって言ってた」
「そんなん今日じゃなくていい。槭を無理させてまで飲みたいフラペチーノってなんだよ」
笑って、大丈夫だという雰囲気を作ろうとしているのが伝わる。
泣きそうになった。
せっかく誘ってくれたのに二時間で家に帰る羽目になるなんて思わなかっただろう。
こんなに気を遣わせて申し訳ない。
「ごめんね、陽」
「何が?」
「お休み、潰して誘ってくれた、のにこんなことに、なって」
「……今の謝罪取り消して。俺、誘ってよかったよ。槭から沢山プレゼントもらった」
私は何もしてない。
私の方こそ色んなものをもらった。
槭のボールペンも鮫のぬいぐるみも、本について話せる機会も、家族以外の誰かと一緒に休日を過ごすことも。
全部プレゼントだ。
「今日来てくれてありがとう」
堪えていた涙が溢れた。
陽の服を濡らさないように起き上がる。
「何で泣いてんの」
「だって……陽、優しすぎる」
"嬉しい"が涙になって頬を伝う。
「優しくないよ。俺の体育祭で先輩たちに怒鳴ったろ」
「あれは正しい、ことだと思う」
「どうかな。明日学校に行ったら俺が悪者にされてるかも」
「なんで?」
陽がしたことは正しいはずだ。
相羽さんだって、殺意ともいえる感情を向けていたのにあんなに反省して私に謝った。
きっと陽を変に広めはしない。
「花観先輩の方だよ。着いてきただけだろうけど、相羽先輩の意思とか関係なしに俺を貶めようとするかもしれない」
「そんな……」