「それ、マジで言ってる?」
「え?だって……」
陽が私を好きな可能性が皆無に感じられるから。
さっきだってはぐれそうになったら引っ張るって言ってたし。
そう言うと陽は大きな手で自分の顔を覆って下を向いてぼそっと何か言った。
「ごめん。なんて、言った?」
「……いや、なんでもない。好きな人、いることはいるけど楓と手繋いでても問題ない」
「そっか」
「そういうの気にしなくていいよ。ほら、行こう」
私を引っ張るその手をつたい、見る背中。
ほっとしたのと少しの悲しみ。
これはなんの悲しみ?
幼馴染が離れてしまうと思った時に感じる、ぽっかりと穴が空くようなものとはまた違う。
じんわり広がる感じ。
初めての感覚に戸惑いながら足を動かす。
不安が募った。
何か悪いことの前兆だとしたら…。
もう、これ以上距離ができたら、離れてしまったら私は本当におかしくなってしまいそうで。
胸のあたりがキュッと締め付けられる。
着いた文房具屋はこじんまりとして静かではあるけれど、その静けさが心地いい場所だった。
「何買うの?」
「ボールペンとノートと付箋かな。槭は何か買う?」
何も買う予定はないので首を横に振る。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
言った通りボールペン、ノート、付箋を持って会計を済ませた陽は戻ってくると朱色のボールペンを渡してきた。
「あげる」
三色ボールペンでボディ部分には真っ赤な葉っぱが描かれている。
「紅葉だ」
「そこはカエデだろ」
自分を指さして首を傾げると「植物の方」と言われて恥ずかしくなった。
「カエデって紅葉も含んだものをいうってネットにあった」
「良く、知ってるね」
「調べた。紅葉と槭を区別してるのは日本くらいだって」
小学生の頃、自分の名前について調べようとかいう授業で槭と紅葉の違いを知った。
ただ、実際に槭と紅葉を区別しながら見たことなんてない。
どうしてこの名前にしたのかも詳しくは聞いたことない。
「今度見に行くか。見るとしたらやっぱり秋かな」
「私、桜と緑の槭、見るの好き」
陽は繋いでいない手で勢いよく顔を覆った。
凄い音がしてビクッと体が動く。
「え?だって……」
陽が私を好きな可能性が皆無に感じられるから。
さっきだってはぐれそうになったら引っ張るって言ってたし。
そう言うと陽は大きな手で自分の顔を覆って下を向いてぼそっと何か言った。
「ごめん。なんて、言った?」
「……いや、なんでもない。好きな人、いることはいるけど楓と手繋いでても問題ない」
「そっか」
「そういうの気にしなくていいよ。ほら、行こう」
私を引っ張るその手をつたい、見る背中。
ほっとしたのと少しの悲しみ。
これはなんの悲しみ?
幼馴染が離れてしまうと思った時に感じる、ぽっかりと穴が空くようなものとはまた違う。
じんわり広がる感じ。
初めての感覚に戸惑いながら足を動かす。
不安が募った。
何か悪いことの前兆だとしたら…。
もう、これ以上距離ができたら、離れてしまったら私は本当におかしくなってしまいそうで。
胸のあたりがキュッと締め付けられる。
着いた文房具屋はこじんまりとして静かではあるけれど、その静けさが心地いい場所だった。
「何買うの?」
「ボールペンとノートと付箋かな。槭は何か買う?」
何も買う予定はないので首を横に振る。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
言った通りボールペン、ノート、付箋を持って会計を済ませた陽は戻ってくると朱色のボールペンを渡してきた。
「あげる」
三色ボールペンでボディ部分には真っ赤な葉っぱが描かれている。
「紅葉だ」
「そこはカエデだろ」
自分を指さして首を傾げると「植物の方」と言われて恥ずかしくなった。
「カエデって紅葉も含んだものをいうってネットにあった」
「良く、知ってるね」
「調べた。紅葉と槭を区別してるのは日本くらいだって」
小学生の頃、自分の名前について調べようとかいう授業で槭と紅葉の違いを知った。
ただ、実際に槭と紅葉を区別しながら見たことなんてない。
どうしてこの名前にしたのかも詳しくは聞いたことない。
「今度見に行くか。見るとしたらやっぱり秋かな」
「私、桜と緑の槭、見るの好き」
陽は繋いでいない手で勢いよく顔を覆った。
凄い音がしてビクッと体が動く。