「陽太さんとの写真送って」

風弥とは逆に早起きで朝から騒がしい愛生は容赦なく話を続ける。
最近は体力もついてきて朝から晩まで元気。
黙っていてと言っても黙っていたことなんて一度もない。
とにかくうるさい。

「無理」
「えー……じゃあ、私が帰ってきたら何があったか詳しく聞かせてね」
「絶対に嫌だ」
「はい、けってー!」

私の拒否など無視して愛生は朝食を平らげお皿をシンクに置きながら鼻歌を歌う。
呑気元気生気の塊。

愛生に遅れまいとご飯を食べながら、陽はどんな気持ちで誘ってきたのか。
どんな顔して会えばいいのか。
ぐるぐる考えながら、でもこれはデートではないと自分に言い聞かせながらとにかく準備をした。

「おはよ」

家族を見送って小説を読んでいたら、十時ぴったりにインターホンが鳴り、黒のズボンに白いパーカー、灰色の上着を着た陽が眠そうに挨拶する。

「おはよう。眠そう、だね」
「んー……なかなか寝れなくて、九時くらいに起きてさぁ。急いで朝ごはん食べてあれこれやってたら疲れた」

睡眠が取れていない状態でせかせか動いて、朝から体が疲れているみたいだ。
だとすると、今日は体を動かすようなことはしないのかな。

「んじゃ、行くか」

どこに行くのか知らないので陽の後ろにつく。

迷わず進む陽のことだし、きっと行く場所も決めているんだろう。

「どこ、行くの?」
「そんなん決めてない」
「え?」

決めて、ない?

てっきり陽の用事に付き合うものだとばかり思っていた。
お目当ての物を買いに行きたいけど、一人じゃ生きにくいとか。
そんな風に思って、舞い上がらないように自分を制御していたのに。

なら、なんで誘ったの?
本当に遊びに行くのだとしたら、私ほど誘って面白くない人はいない。
陽なら他にも遊びに誘える人が大勢いるだろうに、人選ミスだ。

困惑で目が回りそうになる私に陽は笑う。

「決めないほうがお互い好きなことできるだろ。槭、何したい?」

そういうことか。
別にどこに行って何をするかなんて事前に決める必要はないんだ。
予想ができないから金銭面的にあまり色んな所に移動したり買ったりは出来なくても次は何しようかとゆったり気ままに過ごすのはいい。
私としてはそれくらいのんびり過ごせるのは有り難かった。

私を誘った理由はわかってないけれど、質問に答えないと不審がられるので図書館で会う度に本を読んでいる私を見ているなら無難な、『そうくるよな』という想像のできる答えを返す。