だから、過去に縋った。
いてほしい人が隣にいない未来よりも過去を振り返り、立ち止まる方が都合が良かったから。
私にとってそっちの方が安心した。
不安も何もなかった。

変化に対応できず取り残され、でもどうするべきなのかも分からない。

変化に代償がついていればいいと思ったのも、わざわざ代償を払ってまで皆、変わらなければいいのに、と思ったからで、そうなればいいという願望。
白い部屋に閉じ込められた幼馴染達も全部、私の願望。
そうすれば私が幸せだから。
酷い、願いだ。

大人ならきっとわかる。
そういった自分勝手な願望が通ることはほとんどない。
通る場合は大抵、社会的にも他人から見てもそれがいいと認められた時。

世間を知らない無知な子どもだからこそ抱き続けることのできる自分勝手な願い。
少し大人になったはずの今の私でも振り回されている。

大人になったら、周りみたいにちゃんと未来に向かって歩いていけるんだろうか。

今も負の感情に悩み、混乱している。



服をぎゅっと掴む。
自分の醜さが身に染みて、悲しい。

「ねぇそもそも聞いてる?」

ハッとして現実に戻ってくる。
過去を思い出していても現状は何も変わってない。

「流石にこの状況で何も聞いてないことなんてないよね」

俯いているせいで顔は見えないが、一瞬でリオナを頭に思い浮かべてしまう笑い方。
彼女たち、特に相羽さんに関してはリオナに似ている。
ドっと冷や汗が出た。

「忠告する。私が十秒数える内に答えなかったら、あんたは私たちが何をしても全部受け入れて。何をしようとあんたは了承したことになる。後々になって大人に告げ口してもあんたも悪いことになるから」
「言わないって選択肢をとったら何されても文句言わないでね」

ここで初めて私に敵対的な言葉を放った花観さんは覚悟を決めたのか。
それとも私がどんな攻撃であっても"自分たちは悪くない、あの子がいいって言うから"とか思ったのか。

相羽さんには及ばずとも、鋭くなった彼女の目。
とうとう、この場に私は一人ぼっちになった。

「ああ、その前に場所変えよ。人が多くなってきた」
「そうだね。ちゃんとついてこいよ」

この学校の地理を知らない私は大人しくついていったところで生徒である彼女たちからは逃げられない。
ついていったら、終わり。
だが、現状行かない選択肢をとったらもっと恐ろしいことにならない?
今、この場を動くべき?

「……あのさぁ!」