次の日から里緒奈とは必要最低限の会話だけ。

里緒奈はどう思ったんだろう。

今ではもう聞けない。
聞ける距離にいない。
三年生の進級のタイミングで里緒奈は引っ越して東京の方に行ってしまった。
連絡先も知らない。

他の子との会話も無理だと思い始めた。
幼馴染は度々声をかけてくれたけれども、それも日に日に少なくなり六年生の頃には一定の人からは全く話しかけられなくなった。

私の性格が、私の人間性がその子とその周りの子の関係性の邪魔になるようならもう、会話をする気にはなれなかった。

寂しくとも良かった。

私が寂しい思いをするのが一番な気がしていた。
私が誰かと関わりたいように、他の子だって色んな人と仲良くしていたいんだ。

それを邪魔するなんて嫌だった。
絶対に駄目だと思った。

家族は心配した。
授業参観の度に一人で本を読む私の姿を見て「本を読んでいたら他の子だって話しかけていいのかわからないんだから休み時間くらい本を読むのはやめたら?」「目にかかる前髪も切って、表情が見えるようにしたら」と。

「そうだね」と返事はしてもどれも実行はしなかった。
人が近づかないならそれに越したことはない。
それでいい。

皮肉な笑みを残していったリオナはおふざけか、からかいか。
そんな気持ちで言ったことなんだろうけど、あの言葉が今の私を作った。
あの言葉が私の心を抉り、傷つけたことは確かで。

あれから誰かを、たとえ幼馴染の前であっても私との関係性を言葉にするのが怖かった。
周りからどう思われるのか、相手の子がどう思っているのか。
聞くこともできないから、簡単に口には出さない。

そして、あの日から変化に対する恐怖も抱くようになった。

あったかい皆にもたれかかってばかりいた私は周りに適応できなかった。
自分に対する焦りは不安に変わる。
体や精神は育とうと、心は保育園児時代に取り残されているようだった。

時間が進むごとに幼馴染たちは遠い未来への歩みを止めない。
私はここに立ち止まったまま。

皆は過去に縋らず先へ進む。
私は縋り留まる。

それが、怖かった。
恐ろしかった。

時間が経ち、未来へ進むことで過ごした日々を忘れて、幼馴染たちとの関係も何も無かったかのように、それぞれ変わっていってしまうことが。

だから、大人になった自分を想像する度に不安になった。
その隣に、いてほしい人達はいないだろうから。