焦って、怖くなって、助けを求めた。
大人は一年生だと甘く見てくる人ばかりで話にならないことがあるから幼馴染に。

「友達ってどうやって作るの?」

今思えば私は充分小学一年生の子どもで、そんなことを真っ直ぐ質問してしまう子だった。
答えてくれた幼馴染は私を知っているから少し笑って、返してくれた。

「槭が好きなことを前面に出してみたら?同じものを好きな子が集まるかも。あと、自分から少しずつ声をかけていって自然と友達になるとかね」

答えてくれた幼馴染……私の親友だった子は「槭にもいい友達できるといいね」と言って私が家へ帰るのを見送ってくれた。

"すごくいい答えをもらえた。早速、明日からやってみよう。"

晴れ晴れしい気持ちで、ウキウキ帰った次の日。

「谷古宇さーん。今日一緒に帰らなーい?」

直感で関わらないほうがいいかもしれないと思ったクラスの中心的女の子、リオナ。
この時も嫌な予感で鳥肌が酷かったのを覚えている。
既に選択肢はなく、頷いてしまったのはいつまでも後悔していくんだろう。

「谷古宇さんってさ、里緒奈と仲良いの?」

里緒奈は昨日相談にのってくれた親友で、この子と名前が同じで仲良くなったんだと入学したばかりの時に言っていた。

「幼馴染、で……あの、親友です」

この時は胸を張って親友だと言えた。
お互い、そう思っていると確認したこともあったくらい確証のあることだったのだ。

「は?」

絶対にそうだという自信があったから、否定されるなんて思いもしなかった。
せいぜい私の性格にケチをつけるとか、そのくらいだと思っていた。

「いや、ごめん。谷古宇さん、勘違いしてると思うよ」

ニヤニヤと嫌な笑みが脳裏に焼き付いている。
どうしてそれをあなたに言われなきゃいけないんだろう、と怒りを飲み込もうと必死で。

わかっていたのかもしれない。
だから里緒奈の中の私の立ち位置を奪った相手にわざわざ言われるのが癪だったのかもしれない。

「親友って家族みたいに仲良しで心を許し合ってる関係のことを言うんだよ。どう見ても谷古宇さんと里緒奈は釣り合ってないし、そもそも仲良さそうじゃないもん」

小学校に上がってから薄々感じてきた寂しさ。
私と幼馴染(みんな)の間には大きな谷ができ始めている。

「今日はそれを言いたかったんだ。変に絡んでたら里緒奈がかわいそうだよ。親友でも、友達にも見えない谷古宇さんがいたら里緒奈と他の子の関係の邪魔になってるんだから。立場をわきまえたほうがいいよ」

皮肉をたっぷり込めた笑顔と私を残して彼女は去っていった。

あの瞬間から、私の心にはぽっかりと穴が開いた。

大きくて、深くて、埋めようとしてもどうしようもない。

そこにあったのが何なのか。
代わりになるものはないのか。
自分のものでも見えない心に起きたことへの対処の仕方が分からなかった。

今なお穴は埋まっていない。