好きなようにポーズをする生徒達を白、緑、黄、赤、青の順でカメラマンが撮っていく。
どうやら卒業アルバム用に三年生だけの写真も撮るようだ。
青ブロックは最後ということもあって、それなりに長い時間待つ中「ねぇ」と誰かを呼びかける声がやけにはっきり聞こえた。
誰にかけられているのか分からなかったから何も反応しないでいると次第にその声が大きくなっていく。
「ねぇ、そこの人!」
そこの人って誰のこと指してるのかはっきりしないと誰も分からないよ、と心の中で思う。
「聞こえてるでしょ!?」
ちらりと声のする方に視線を向ける。
すごく、嫌な予感がした。
その声の主と思われる体操着姿の女の子二人がこちらを向いているのだ。
今までの煩いと思っていた言葉も全て私に向けられたもの。
彼女たちは私が気づいたことを確認すると近づいてきて聞いてもいないのに突然自己紹介をしてきた。
「私、この中学の三年、相羽」
「同じく三年の花観です」
気の強そうな相羽さんが鋭い目で睨みをきかせる。
もう一人は付き添いというか、少し申し訳なさそうに私を見ているような気がする。
「ねぇあんた、陽太の何なの?」
「え?」
言葉の端々に刺がある言い方に怖気付きながらも聞き返す。
「さっさと答えて。あんたは陽太とどういう関係なの?」
「何なのって……」
そんなことをこの子が知ってどうするんだろう。
いや、その前に私にこの質問をしても意味がない。
答えられない。
敵意むき出しの彼女の前で私は何も言わずに立ち尽くす。
「なんで答えないの。友達とか何とでも言えるでしょ!まぁ恋人とか言ったら、お前のこと呪うけど」
低い声で『呪うけど』と言った彼女にゾッとした。
誰かにこんな恐ろしい考えを言えてしまう彼女の性格に恐怖を抱く。
それと同時に彼女の陽への好意を感じた。
好意は時に憎悪といった感情になるというけれど、まさに彼女がその状態なんだ。
呪うのは勘弁してほしいのに彼女の気持ちに共感できてしまう。
というか、彼女こそ何かに呪われているのではないかと疑いたくなる。
でも、質問に答える答えないは別なんだ。
「ああ、もう!一言言えばいいだけでしょ!?」
保護者が帰り、生徒のほとんどが記念撮影をしているおかげであまり目立たずに入れているがそれも時間の問題。
誰かに助けも求められない。
逃げれたらいいのに、足が地面に張り付いて動かない。
仕方なくイライラしている相羽さんの顔をできるだけ見ないようにする。
見るよりも見ないほうが心が楽な気がした。
多分、相羽さんが陽を好きなら、好きな人に手を出しはしない。
私が何も言わないことで陽に危害が及ぶ心配はしていなかった。
「梅、この子話す気ないよ。もういいでしょ」
「良くない。由美奈、私の気持ち知って来てくれてるんでしょ!?だったら止めないでよ!」
固まる私を他所に二人の間でピリピリとした空気が流れる。
しかし彼女たちの言い合いは喧嘩に発展せず、相羽梅さんは私への強い当たりを変えることもなかった。
「あんた、早く答えて。というか、頷くでもいいからさ」
口が聞けないわけじゃないんだ。
頷く手段を提示してくれたのは優しいのかもしれないけど、答えられない。
どうやら卒業アルバム用に三年生だけの写真も撮るようだ。
青ブロックは最後ということもあって、それなりに長い時間待つ中「ねぇ」と誰かを呼びかける声がやけにはっきり聞こえた。
誰にかけられているのか分からなかったから何も反応しないでいると次第にその声が大きくなっていく。
「ねぇ、そこの人!」
そこの人って誰のこと指してるのかはっきりしないと誰も分からないよ、と心の中で思う。
「聞こえてるでしょ!?」
ちらりと声のする方に視線を向ける。
すごく、嫌な予感がした。
その声の主と思われる体操着姿の女の子二人がこちらを向いているのだ。
今までの煩いと思っていた言葉も全て私に向けられたもの。
彼女たちは私が気づいたことを確認すると近づいてきて聞いてもいないのに突然自己紹介をしてきた。
「私、この中学の三年、相羽」
「同じく三年の花観です」
気の強そうな相羽さんが鋭い目で睨みをきかせる。
もう一人は付き添いというか、少し申し訳なさそうに私を見ているような気がする。
「ねぇあんた、陽太の何なの?」
「え?」
言葉の端々に刺がある言い方に怖気付きながらも聞き返す。
「さっさと答えて。あんたは陽太とどういう関係なの?」
「何なのって……」
そんなことをこの子が知ってどうするんだろう。
いや、その前に私にこの質問をしても意味がない。
答えられない。
敵意むき出しの彼女の前で私は何も言わずに立ち尽くす。
「なんで答えないの。友達とか何とでも言えるでしょ!まぁ恋人とか言ったら、お前のこと呪うけど」
低い声で『呪うけど』と言った彼女にゾッとした。
誰かにこんな恐ろしい考えを言えてしまう彼女の性格に恐怖を抱く。
それと同時に彼女の陽への好意を感じた。
好意は時に憎悪といった感情になるというけれど、まさに彼女がその状態なんだ。
呪うのは勘弁してほしいのに彼女の気持ちに共感できてしまう。
というか、彼女こそ何かに呪われているのではないかと疑いたくなる。
でも、質問に答える答えないは別なんだ。
「ああ、もう!一言言えばいいだけでしょ!?」
保護者が帰り、生徒のほとんどが記念撮影をしているおかげであまり目立たずに入れているがそれも時間の問題。
誰かに助けも求められない。
逃げれたらいいのに、足が地面に張り付いて動かない。
仕方なくイライラしている相羽さんの顔をできるだけ見ないようにする。
見るよりも見ないほうが心が楽な気がした。
多分、相羽さんが陽を好きなら、好きな人に手を出しはしない。
私が何も言わないことで陽に危害が及ぶ心配はしていなかった。
「梅、この子話す気ないよ。もういいでしょ」
「良くない。由美奈、私の気持ち知って来てくれてるんでしょ!?だったら止めないでよ!」
固まる私を他所に二人の間でピリピリとした空気が流れる。
しかし彼女たちの言い合いは喧嘩に発展せず、相羽梅さんは私への強い当たりを変えることもなかった。
「あんた、早く答えて。というか、頷くでもいいからさ」
口が聞けないわけじゃないんだ。
頷く手段を提示してくれたのは優しいのかもしれないけど、答えられない。