「はぁ……すげぇ人だな」
「向中、は生徒数凄い、からね。校庭と体育館、だけじゃ足りなさそう」
ため息をつく陽に答えながらチラッと見た限りでも校庭は既に人で溢れかえっている。
あの中でご飯を食べるなんてご飯が喉を通らないかもしれない。
家を出る前、お弁当を持ってこようかと悩みやめた自分に感謝する。
「だろうな。こんなに人はいるなんて思わなかったわ。で、本題なんだけど昼ご飯って決めてる?」
「決めてない」
「なら、一緒に食べね?」
昼食に誘われるなんて思ってもいなかった。
陽の家族も来ているだろうから二人きりなんてことはないだろうけど、私は体育祭の日のお昼ご飯は特別だと思ってた。
家族と、いつもは食事なんてしない校庭で、周りにたくさんの人がいる中でご飯を食べる。
食べる人は一緒なのにすごく楽しく感じて、お母さんが前日に下ごしらえしてくれた唐揚げが美味しかった。
陽にとっては違うのだろうか。
もう中学生だから家族とだけは嫌だったりするのだろうか。
答えあぐねていると陽は私が二人で食べのを躊躇っていると思ったのか、つけ加えてきた。
「俺の親も姉ちゃんもいるけど、騒がしい人達だから嫌だったら全然断ってもいい」
陽が言い終わる前に頭が取れるくらいの勢いで首を横に振る。
『嫌だったら』の一言に過剰に反応してしまう。
嫌なわけがない。
陽の家族とは仲良くさせてもらっていたし、特にお姉さんに可愛がってもらっていた。
陽が誘ってくれてるのだから家族の食事に私が入ってもいいことは安心する。
ただ、少し怖かった。
小学校に入ったあたりから陽の家族に会っていない。
私を覚えていてくれても、昔と違う私にどう思うか見当がつかなかった。
やっぱり断ろう。
そう思って口を開いた。
が、出そうと思った声は遮られる。
「よし、行くぞ」
私の腕を掴んで陽の走ってきた方向へ引っ張られた。
中学生となると男女の力の差が開いてくる。
前は私の方が力が強かった気がするのに今は抵抗しても引っ張られるだけだ。
「陽!」
「何?」
「何、じゃない。どこ行くの」
「昼ごはん食べるって言ったろ」
「私、食べるなんて、言ってない」
「あのな」
怒りみたいな、ほんの少しだけ悲しみを含ませたみたいな強い声に肩をビクつかせる。
私の反応を見て「ごめん」と謝ってからゆっくり、子どもを落ち着かせる大人のような口調で言った。
「向中、は生徒数凄い、からね。校庭と体育館、だけじゃ足りなさそう」
ため息をつく陽に答えながらチラッと見た限りでも校庭は既に人で溢れかえっている。
あの中でご飯を食べるなんてご飯が喉を通らないかもしれない。
家を出る前、お弁当を持ってこようかと悩みやめた自分に感謝する。
「だろうな。こんなに人はいるなんて思わなかったわ。で、本題なんだけど昼ご飯って決めてる?」
「決めてない」
「なら、一緒に食べね?」
昼食に誘われるなんて思ってもいなかった。
陽の家族も来ているだろうから二人きりなんてことはないだろうけど、私は体育祭の日のお昼ご飯は特別だと思ってた。
家族と、いつもは食事なんてしない校庭で、周りにたくさんの人がいる中でご飯を食べる。
食べる人は一緒なのにすごく楽しく感じて、お母さんが前日に下ごしらえしてくれた唐揚げが美味しかった。
陽にとっては違うのだろうか。
もう中学生だから家族とだけは嫌だったりするのだろうか。
答えあぐねていると陽は私が二人で食べのを躊躇っていると思ったのか、つけ加えてきた。
「俺の親も姉ちゃんもいるけど、騒がしい人達だから嫌だったら全然断ってもいい」
陽が言い終わる前に頭が取れるくらいの勢いで首を横に振る。
『嫌だったら』の一言に過剰に反応してしまう。
嫌なわけがない。
陽の家族とは仲良くさせてもらっていたし、特にお姉さんに可愛がってもらっていた。
陽が誘ってくれてるのだから家族の食事に私が入ってもいいことは安心する。
ただ、少し怖かった。
小学校に入ったあたりから陽の家族に会っていない。
私を覚えていてくれても、昔と違う私にどう思うか見当がつかなかった。
やっぱり断ろう。
そう思って口を開いた。
が、出そうと思った声は遮られる。
「よし、行くぞ」
私の腕を掴んで陽の走ってきた方向へ引っ張られた。
中学生となると男女の力の差が開いてくる。
前は私の方が力が強かった気がするのに今は抵抗しても引っ張られるだけだ。
「陽!」
「何?」
「何、じゃない。どこ行くの」
「昼ごはん食べるって言ったろ」
「私、食べるなんて、言ってない」
「あのな」
怒りみたいな、ほんの少しだけ悲しみを含ませたみたいな強い声に肩をビクつかせる。
私の反応を見て「ごめん」と謝ってからゆっくり、子どもを落ち着かせる大人のような口調で言った。