「俺は何でもできるわけじゃない。小学生の頃から朝早く起きてランニングして、真面目に授業を受けて、塾に行って帰るついでにランニングしてみたり……色んな我慢と苦労の上で何でもできるように見える俺がいる」

言ってしまえばあっと言う間な文字数と時間。
だが、それを現実でやる、継続するともなれば相当なストレスだろう。
慣れたとしても挫折したくなる。

私だって悩みに翻弄されている変わり映えのない日々に終わりが来ればいいと願っているのにストレスのかかる生活なら更に嫌になって放り出してしまう。

「今思えば嫉妬だったんだろうな。何でもできて何でも持っていそうな奴を妬む気持ちはわかる。今はもうあの言葉に傷つけられたりはしないし、やる気を出す糧にしてもらってる」

にっと笑い、ずっと頑張り続けて今となっては悪口すらも糧にしてしまう陽の強さに憧れを抱いた。

こうも強くあれるのは彼の中で確かな支えがあるからなんだろう。
その支えが何なのか私は知る由もない。

「生徒の皆さんは自分の応援席に座ってください。御来校の皆様方は恐縮ですがもうしばらくお待ちください。また、他の方々の御迷惑となりますので……」

話をしていたらあっと言う間に休憩時間の終わりを告げるアナウンスが流れる。

「俺もう行かなきゃ。千五百メートルは最後の方だからちゃんと見るんだぞ!」

陽はそう言い残して返事をする間もなく応援席へ走って行ってしまった。
後姿を追いかけていると途中で友達に声をかけられ、さっきまで私に向いていた笑顔は遠く離れていく。

銃で打ち抜かれ蜂の巣のように心にも穴が開く。
寂しさが、込み上げてきた。
この感覚を何度繰り返すのか。
考えるだけで嫌だった。

本当はこんな感覚忘れてしまいたい。
同じことで寂しくなって、同じことで悩んで、駄目だと思っての繰り返し。

足元を歩く働き蟻を目で追いかけて、まるで他人事みたいに馬鹿だなぁと思う。
蟻が誰にも踏まれないよう、すぐそこにあった雑草の生い茂る場所まで案内してあげると、案内通り蟻は移動してくる。

そうはしたものの蟻は人間に踏まれても意外と逃げていける頑丈さを持つ。
こんな小さくてもちゃんと働き蟻としての仕事を全うしている。
それなのに、私は……。