「私、少しだけカッパおやじの、音楽覚えてる」
「マジ?」
「カッパおやじはいっじわるだ~、って」
「ああ、そんな感じだった!」
「ダンスはさすがに覚えて、ないけど」
「ダンス踊ってるときに、ゆずの栄光の架け橋流れたじゃん。あれ知らなかった人達は『これ卒園式に流れたら親泣くんじゃね』って言ってたな」
「あった。卒園式の練習、してる期間だった、から先生に『卒園式でこれ流してよ』って強請った」
「俺も強請ったな」
そんな思い出話をしていると、いつの間にかお互い笑っており、話は途切れず陽の家の前まで来ていた。
「じゃあ、またな」
『またな。』
また会ってもいいんだと嬉しくなる。
「また、ね」
笑って手を振る陽に手を振り返す。
陽が家の中へ入っていくのを見送ってから私も自分の家へ足を向け、歩きながら今までの会話を思い出した。
周りに比べてしまえばまだまだな話し方だと分かっている。
言葉に詰まってばかりだった。
けれど、思っていたよりもちゃんと話せていた自分を、頑張っていた自分を少し褒めてあげたくなった。
「槭」
今日も今日とて図書館で借りていた"世界の終わり"の続きを開いていると私を呼ぶ声が降ってきた。
それはつい昨日、散々聞いた声。
そっと顔を上げるとやはり陽がいた。
「こんにちは」
挨拶をすると同じように挨拶が返され、陽は前の席に座る。
彼も昨日と同じように調べものをしに来たのだろうか。
せっかくの物語でいっぱいにした頭の中を邪魔はされたくなかったので席に座った理由は考えない。
ただ、呼ばれたのに挨拶だけして物語に戻るのは失礼だ。
何を話されるてもいいように本を置き、陽を見て身構えるとフッと笑われた。
「本、見てていいよ」
「何か用事、あったんじゃないの?」
「声掛けといてなんだけど、調べものの続きをしようと思っただけ。あ、前で作業しててもいい?」
共用のスペースなんだからわざわざ聞かなくてもいい気がしたけど、質問には頷いておく。
私としては物語を邪魔されなければ何をしててもあまり気にしない。
しばらく微妙な距離感の中、お互いにしたいことをした。
おかげで最後のページも読み終え、陽の作業も終わったようだった。
ちょうど五時を告げるチャイムが一分間、町に響き渡る。
「マジ?」
「カッパおやじはいっじわるだ~、って」
「ああ、そんな感じだった!」
「ダンスはさすがに覚えて、ないけど」
「ダンス踊ってるときに、ゆずの栄光の架け橋流れたじゃん。あれ知らなかった人達は『これ卒園式に流れたら親泣くんじゃね』って言ってたな」
「あった。卒園式の練習、してる期間だった、から先生に『卒園式でこれ流してよ』って強請った」
「俺も強請ったな」
そんな思い出話をしていると、いつの間にかお互い笑っており、話は途切れず陽の家の前まで来ていた。
「じゃあ、またな」
『またな。』
また会ってもいいんだと嬉しくなる。
「また、ね」
笑って手を振る陽に手を振り返す。
陽が家の中へ入っていくのを見送ってから私も自分の家へ足を向け、歩きながら今までの会話を思い出した。
周りに比べてしまえばまだまだな話し方だと分かっている。
言葉に詰まってばかりだった。
けれど、思っていたよりもちゃんと話せていた自分を、頑張っていた自分を少し褒めてあげたくなった。
「槭」
今日も今日とて図書館で借りていた"世界の終わり"の続きを開いていると私を呼ぶ声が降ってきた。
それはつい昨日、散々聞いた声。
そっと顔を上げるとやはり陽がいた。
「こんにちは」
挨拶をすると同じように挨拶が返され、陽は前の席に座る。
彼も昨日と同じように調べものをしに来たのだろうか。
せっかくの物語でいっぱいにした頭の中を邪魔はされたくなかったので席に座った理由は考えない。
ただ、呼ばれたのに挨拶だけして物語に戻るのは失礼だ。
何を話されるてもいいように本を置き、陽を見て身構えるとフッと笑われた。
「本、見てていいよ」
「何か用事、あったんじゃないの?」
「声掛けといてなんだけど、調べものの続きをしようと思っただけ。あ、前で作業しててもいい?」
共用のスペースなんだからわざわざ聞かなくてもいい気がしたけど、質問には頷いておく。
私としては物語を邪魔されなければ何をしててもあまり気にしない。
しばらく微妙な距離感の中、お互いにしたいことをした。
おかげで最後のページも読み終え、陽の作業も終わったようだった。
ちょうど五時を告げるチャイムが一分間、町に響き渡る。