青春・恋愛
千夏/著
- 作品番号
- 1713593
- 最終更新
- 2023/12/22
- 総文字数
- 0
- ページ数
- 0ページ
- ステータス
- 未完結
- いいね数
- 0
“拝啓 西宮雪斗様”
そう書かれていた紙に、
続きの言葉はなく、
ぐちゃぐちゃに丸められていた。
他人事のように言っているが、
これを書いたのも、
ぐちゃぐちゃに丸めたのも私だ。
そして、その紙をまた丁寧に広げ、
ペンを握ったのも私だ。
“今、一番伝えたいことがあります。”
震える手で、一文字一文字丁寧に書いていく。
文字を書いていくにつれ、視界が滲む。
瞬きをすれば、
それと同時に紙を濡らしてしまう。
でもね、私は胸を張って言える。
悲しいから泣いたわけじゃない。
苦しいから泣いたわけでもない。
それだけは、
あなたに知っておいてほしかった。
“そして、最後に、
私はずっと嘘をついていました”
“私は、あなたのことが、
雪斗くんのことが、
ファンとしてではなく、
大好きでした。”
そう書き終えてペンを置き、
雪斗くんの笑顔を思い浮かべ、
いつものように眠りにつく。
「雪乃」
どこから聞こえてきたのかは、
分からなかった。
ただ、
その声は私の大好きな声だった。
その声を聞くだけで、
優しさに包み込まれたみたいに、
心がポカポカした。
そんな声で名前を呼ばれ、
嬉しくて、
安心して、
私は深い深い眠りについた。
“雪斗くん
私に、生きる希望を与えてくれて、
ありがとう。”
藍原雪乃
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