第19話
≪page1≫
○ロークと共に倒れているユキ。
ロークとの戦いが終結した後、ユキは気を失っていた。ユキの耳に薄っすらと声が聞こえてきた。
ミスティ「……ん… 」
ミスティ「…キ君…!」
ミスティの声だけが、ユキに微かに聞こえる。
≪page2≫
ミスティ「ユキ君! 大丈夫か!? …ユキ君ッ!?」
ユキを心配するミスティの顔が、ユキの視界に映る。
ユキ「……あ」
ミスティの隣には、エレナとモエが心配そうな顔で立っていた。
≪page3≫
ユキ「…せんせ…。みん、な…。どう…して…?」
目が覚めたばかりなのとダメージで、口が上手く回らないユキ。
モエ「私が先生に知らせたんです…!」
モエ「みんなボロボロになって倒れてて…! だから助けてくださいって…!」
ミスティ「すまない、ユキ君…。今、回復を…!」
≪page4≫
ミスティ「ヒーリング!」
ユキ「……!」
ミスティは回復魔法を唱える。ユキは光に包まれ、みるみる顔色が良くなった。
ミスティ「ダメージが深いな…。私の魔法では、これ以上の回復は難しい…」
回復魔法を受けたユキが、すぐに立ち上がった。
≪page5≫
ユキ「いえ…! だいぶ楽になりました…! ありがとうございます…! うっ…」
モエ「ユキさん…! 無理しちゃ駄目っすよ…!」
立ち眩みを起こすユキを、モエが支えた。
ユキ「あ、ありがとう、モエちゃん…」
ユキ「え?」
≪page6≫
ユキはしばらくモエ見つめた後、大声を上げた。
ユキ「いや!! モエちゃん!? どうしてここに!?」
エレナ「今、気付いたの…?」
ユキの天然に、エレナはささやかなツッコミを入れた。
ミスティ「ユキ君を心配して、ここまで来たんだそうだ…。本当に、君たちは無茶をするね…」
ミスティ「……」
ミスティ「すまない…」
ユキ「先生…?」
≪page7≫
ミスティ「私は、ロークの不審な動きに気付いていた…。だが、実態を掴むことが出来ず、今日まで手をこまねいてしまった…! 君たちを危険に晒してしまったのは、全部、私のせいだ…!」
ミスティ「本当に、すまない…ッ!」
心から申し訳なさそうな表情を浮かべるミスティ。
ユキ「ふふっ…!」
ミスティ「ユキ君…?」
≪page8≫
ユキ「ミスティ先生…。ありがとうございます…。その言葉を聞いて、少し安心しました…」
ユキ(ロークと同じこと言ってるのに、ミスティ先生の言葉は信じられる…。不思議だ…)
ユキは安堵の表情を浮かべる。だが、すぐに一番大事な目的を思い出した。
ユキ「そうだ! リンちゃんは!?」
≪page9≫
ミスティ「私は今ここに着いたばかりで…。まだ、リン君の姿は発見出来ていない…」
ミスティは不安そうな表情を浮かべる。同じく、ユキの表情も曇る。
ユキ(…私は、ずっとここで戦っていた)
ユキ(あれだけ、大きな音を出していたのに、リンちゃんは全く姿を現さなかった…)
≪page10≫
ユキは心臓の鼓動が早くなるのを感じ、呼吸を整える。
ユキ(嫌な、予感がする…)
ユキが戦っていたこの広い空間には、RINが出て来た破壊された扉の他に、まだ2つ鉄の扉が設置されている。
ユキ「手分けして探そう…!」
ユキ(今度は、背後から襲われる心配もないし…!)
≪page11≫
ユキとモエは左にある扉、ミスティとエレナは右にある扉の先を確認する。
ユキの前には、ゴチャゴチャといろんな物が置かれている物置きのような光景が広がっていた。部屋の一角にはトイレと思われるドアやら、生活に必要な設備が設置されているようであった。
ユキ「ふぅ…。いない…」
ユキ「……!」
≪page12≫
ユキ(私、リンちゃんが見つからなくて…少し、ホッとしてる…!?)
ユキ(こんなのおかしい…!! 異常だ…!!)
ユキ(私は、何を怖がってるの…!?)
モエ「ユキさん…。大丈夫っすか…? 顔色が悪いっすよ…?」
別の部屋から、手分けをしていたミスティの声が響く。
ミスティ「リン君…!!」
ミスティの声を聞き、目を見開くユキ。
≪page13≫
遠くからミスティ先生の声が響く。心臓の鼓動が激しさを増すのを感じ、胸を押さえた。
ユキ(やめろ…。変なことは考えるな…。リンちゃんを見つけたい、それが普通なんだ…!)
ユキ(私は、リンちゃんに会えれば、それで…)
ミスティの声が聞こえた扉を開くユキ。
≪page14≫
大股を開き、壁を背に、力なく地面に座り込むリン。目に光はなく、よだれを垂らしている。
リン「お願いします…」
リン「薬をください…」
リン「なんでもしますから…」
リン「お願いします…」
≪page15≫
ユキの隣で泣き崩れるモエ。エレナは呆然と立ち尽くし、ミスティは、リンの様子を確認し、険しい顔で目をギュッと瞑る。
ユキ「……」
別の世界の出来事のように感じ、呆然と立ち尽くすユキ。
≪page16≫
感情のない表情で、淡々とユキのモノローグが続く。
ユキ(ああ見えてリンちゃんは繊細で、怖がりだから、魔物化の幻覚の時点で、心が壊れてしまったのか…)
ユキ(世の中には、どうすることも出来ないことがあるんだ…。分かってる…。私もそうだった)
ユキ(それでも、私はそれを全部「仕方ない」と思って受け入れていた。どうすることも出来ないから無理やり納得していた。だって、そうするしかないじゃないか…)
≪page17≫
怒りの表情へと変わるユキ。
ユキ(…じゃあこれも「仕方ない」のか!?)
ユキ(私は、こんなの嫌だ!! こんなの絶対、認めない!! だって私は…!!)
≪page18≫
ユキ(馬鹿だから!!)
ユキは突然、リンの胸ぐらを掴んで右手を振りかぶっていた。驚愕する一同。
≪page19≫
SE『パァンッ!!』
リンの頬が平手打ちされる音が辺りに響く。それでも虚ろな目のリン。リンの頬は、激しく叩かれ赤くなってしまっている。
ミスティ「やめろッ!!ユキ君ッ!!」
ミスティが羽交い締めにして制止しようとするが、ユキは止まらない。もう一発加えようとしている。
≪page20≫
モエ「ユキさん…ッ!! やめてください…ッ!!」
泣きながらユキを止めようとするモエ。
リン「お願いします…」
リン「なんでもしますから…」
エレナ「……っ!」
悪夢のような光景に、エレナは口を押さえて震えていた。
≪page21≫
ユキ「なんでもするなら…!」
SE『パァンッ!!』
ユキ「帰って来い…!!」
ユキ「馬鹿リン…ッ!!」
SE『パァンッ!!』
ミスティ「やめろと言っているのが、分からないのか…ッ!?」
お構いなしにリンの前に乗り出すユキ。言うことを聞く気配もない。
ミスティ(仕方ない…!! ユキ君を眠らせるしか…!!)
≪page22≫
リン「……う」
リン「…うるさいわね」
リン以外の、この場にいる全員の動きが止まる。
リン「そんなに…叩かれたら…痛いでしょうが…」
ユキ「あ…」
≪page23≫
ユキは我に返り、右手を震わせている。
ミスティ「ユキ君…。これは、“神様の気まぐれ”だ…。たまたま、運が良かっただけだ…!」
ミスティ「気持ちは分かるが、君のやったことは許されることじゃない…!」
静かにユキに怒るミスティ。ユキも、そのことは十分に理解していた。
ユキ「リン…ちゃ…ん…!」
ユキ「私は、なんてことを…!」
ユキの目から涙が溢れ出す。
≪page24≫
次の瞬間、リンがユキの胸ぐらを掴む。
SE『パァンッ!!』
ユキの頬が、リンに思いっきりビンタされた。突然のことに目を丸くして、リンを見つめるユキ。
ユキ「えっ…!?」
≪page25≫
SE『パァンッ!!』
ユキ「ぶっ…!?」
2発目の往復ビンタ。ユキは訳が分からずただただリンに叩かれ続けている。他のみんなもポカンとしながらそれを見ている。
SE『パァンッ!!』
ユキ「いぎゃあっ!?」
3発目のビンタが決まった。ユキは思いっきり吹っ飛んでいた。
≪page26≫
リンは腰に手を当てながらユキを見下ろしている。
リン「3発よ」
ユキ「……え?」
リン「あんたがあたしを叩いた回数」
≪page27≫
リン「これでおあいこよ。…馬鹿ユキ!」
ユキに向け、ニカッと笑うリン。
ユキ「…!」
頬を押さえながら涙を流すユキ。
エレナは、涙を流していたモエを気遣い、優しく頭を撫でた。ミスティは、ユキとリンのやり取りに思わず吹き出していた。
ミスティ「ふ…」
ミスティ「おあいこなら、“仕方ない”か…」
≪page28≫
戦いが終わり、リンの自我が蘇った後、研究施設の外でしばしの間、4人で夜風を浴びて疲弊した身体を癒やす。
リン「……」
リン「……ごめん」
他の3人がリンの方へ静かに顔を向ける。
リン「みんな…あたしのせいで…。こんなに大怪我して…。たくさん酷い目にあって…」
ユキ「そんな…!」
≪page29≫
エレナ「リンは何も悪くない…」
エレナ「悪いのはロークと…」
エレナ「……私」
リン「何言ってるの…? あんたはただ、ロークに騙されて利用されただけで…」
モエ「…先輩たちの気持ちは、痛いほど分かるっす…」
≪page30≫
モエ「私も同じ立場だったら、絶対謝ってたし、罪悪感を抱いていたっすから…」
リン「モエちゃん…」
エレナ「モエ…」
ユキ「私とモエちゃんが保証する」
ユキ「リンちゃんとエレナは何も悪くない…」
それでも申し訳なさそうにするリンとエレナ。ユキは穏やかな表情を向ける。
≪page31≫
ユキ「……」
ユキ「私はみんなが大好き…」
ユキ「ずっと一緒にいたい…」
リン「あ…!?」
リン「あ…あんた…よくそんな恥ずかしいこと言えるわね…!?」
赤面するリン。咳払いをしつつ、ポツリと呟いた。
≪page32≫
リン「…でも、あたしも同じ」
モエとエレナも静かに頷いた。
月明かりが4人を優しく照らしていた。
≪page1≫
○ロークと共に倒れているユキ。
ロークとの戦いが終結した後、ユキは気を失っていた。ユキの耳に薄っすらと声が聞こえてきた。
ミスティ「……ん… 」
ミスティ「…キ君…!」
ミスティの声だけが、ユキに微かに聞こえる。
≪page2≫
ミスティ「ユキ君! 大丈夫か!? …ユキ君ッ!?」
ユキを心配するミスティの顔が、ユキの視界に映る。
ユキ「……あ」
ミスティの隣には、エレナとモエが心配そうな顔で立っていた。
≪page3≫
ユキ「…せんせ…。みん、な…。どう…して…?」
目が覚めたばかりなのとダメージで、口が上手く回らないユキ。
モエ「私が先生に知らせたんです…!」
モエ「みんなボロボロになって倒れてて…! だから助けてくださいって…!」
ミスティ「すまない、ユキ君…。今、回復を…!」
≪page4≫
ミスティ「ヒーリング!」
ユキ「……!」
ミスティは回復魔法を唱える。ユキは光に包まれ、みるみる顔色が良くなった。
ミスティ「ダメージが深いな…。私の魔法では、これ以上の回復は難しい…」
回復魔法を受けたユキが、すぐに立ち上がった。
≪page5≫
ユキ「いえ…! だいぶ楽になりました…! ありがとうございます…! うっ…」
モエ「ユキさん…! 無理しちゃ駄目っすよ…!」
立ち眩みを起こすユキを、モエが支えた。
ユキ「あ、ありがとう、モエちゃん…」
ユキ「え?」
≪page6≫
ユキはしばらくモエ見つめた後、大声を上げた。
ユキ「いや!! モエちゃん!? どうしてここに!?」
エレナ「今、気付いたの…?」
ユキの天然に、エレナはささやかなツッコミを入れた。
ミスティ「ユキ君を心配して、ここまで来たんだそうだ…。本当に、君たちは無茶をするね…」
ミスティ「……」
ミスティ「すまない…」
ユキ「先生…?」
≪page7≫
ミスティ「私は、ロークの不審な動きに気付いていた…。だが、実態を掴むことが出来ず、今日まで手をこまねいてしまった…! 君たちを危険に晒してしまったのは、全部、私のせいだ…!」
ミスティ「本当に、すまない…ッ!」
心から申し訳なさそうな表情を浮かべるミスティ。
ユキ「ふふっ…!」
ミスティ「ユキ君…?」
≪page8≫
ユキ「ミスティ先生…。ありがとうございます…。その言葉を聞いて、少し安心しました…」
ユキ(ロークと同じこと言ってるのに、ミスティ先生の言葉は信じられる…。不思議だ…)
ユキは安堵の表情を浮かべる。だが、すぐに一番大事な目的を思い出した。
ユキ「そうだ! リンちゃんは!?」
≪page9≫
ミスティ「私は今ここに着いたばかりで…。まだ、リン君の姿は発見出来ていない…」
ミスティは不安そうな表情を浮かべる。同じく、ユキの表情も曇る。
ユキ(…私は、ずっとここで戦っていた)
ユキ(あれだけ、大きな音を出していたのに、リンちゃんは全く姿を現さなかった…)
≪page10≫
ユキは心臓の鼓動が早くなるのを感じ、呼吸を整える。
ユキ(嫌な、予感がする…)
ユキが戦っていたこの広い空間には、RINが出て来た破壊された扉の他に、まだ2つ鉄の扉が設置されている。
ユキ「手分けして探そう…!」
ユキ(今度は、背後から襲われる心配もないし…!)
≪page11≫
ユキとモエは左にある扉、ミスティとエレナは右にある扉の先を確認する。
ユキの前には、ゴチャゴチャといろんな物が置かれている物置きのような光景が広がっていた。部屋の一角にはトイレと思われるドアやら、生活に必要な設備が設置されているようであった。
ユキ「ふぅ…。いない…」
ユキ「……!」
≪page12≫
ユキ(私、リンちゃんが見つからなくて…少し、ホッとしてる…!?)
ユキ(こんなのおかしい…!! 異常だ…!!)
ユキ(私は、何を怖がってるの…!?)
モエ「ユキさん…。大丈夫っすか…? 顔色が悪いっすよ…?」
別の部屋から、手分けをしていたミスティの声が響く。
ミスティ「リン君…!!」
ミスティの声を聞き、目を見開くユキ。
≪page13≫
遠くからミスティ先生の声が響く。心臓の鼓動が激しさを増すのを感じ、胸を押さえた。
ユキ(やめろ…。変なことは考えるな…。リンちゃんを見つけたい、それが普通なんだ…!)
ユキ(私は、リンちゃんに会えれば、それで…)
ミスティの声が聞こえた扉を開くユキ。
≪page14≫
大股を開き、壁を背に、力なく地面に座り込むリン。目に光はなく、よだれを垂らしている。
リン「お願いします…」
リン「薬をください…」
リン「なんでもしますから…」
リン「お願いします…」
≪page15≫
ユキの隣で泣き崩れるモエ。エレナは呆然と立ち尽くし、ミスティは、リンの様子を確認し、険しい顔で目をギュッと瞑る。
ユキ「……」
別の世界の出来事のように感じ、呆然と立ち尽くすユキ。
≪page16≫
感情のない表情で、淡々とユキのモノローグが続く。
ユキ(ああ見えてリンちゃんは繊細で、怖がりだから、魔物化の幻覚の時点で、心が壊れてしまったのか…)
ユキ(世の中には、どうすることも出来ないことがあるんだ…。分かってる…。私もそうだった)
ユキ(それでも、私はそれを全部「仕方ない」と思って受け入れていた。どうすることも出来ないから無理やり納得していた。だって、そうするしかないじゃないか…)
≪page17≫
怒りの表情へと変わるユキ。
ユキ(…じゃあこれも「仕方ない」のか!?)
ユキ(私は、こんなの嫌だ!! こんなの絶対、認めない!! だって私は…!!)
≪page18≫
ユキ(馬鹿だから!!)
ユキは突然、リンの胸ぐらを掴んで右手を振りかぶっていた。驚愕する一同。
≪page19≫
SE『パァンッ!!』
リンの頬が平手打ちされる音が辺りに響く。それでも虚ろな目のリン。リンの頬は、激しく叩かれ赤くなってしまっている。
ミスティ「やめろッ!!ユキ君ッ!!」
ミスティが羽交い締めにして制止しようとするが、ユキは止まらない。もう一発加えようとしている。
≪page20≫
モエ「ユキさん…ッ!! やめてください…ッ!!」
泣きながらユキを止めようとするモエ。
リン「お願いします…」
リン「なんでもしますから…」
エレナ「……っ!」
悪夢のような光景に、エレナは口を押さえて震えていた。
≪page21≫
ユキ「なんでもするなら…!」
SE『パァンッ!!』
ユキ「帰って来い…!!」
ユキ「馬鹿リン…ッ!!」
SE『パァンッ!!』
ミスティ「やめろと言っているのが、分からないのか…ッ!?」
お構いなしにリンの前に乗り出すユキ。言うことを聞く気配もない。
ミスティ(仕方ない…!! ユキ君を眠らせるしか…!!)
≪page22≫
リン「……う」
リン「…うるさいわね」
リン以外の、この場にいる全員の動きが止まる。
リン「そんなに…叩かれたら…痛いでしょうが…」
ユキ「あ…」
≪page23≫
ユキは我に返り、右手を震わせている。
ミスティ「ユキ君…。これは、“神様の気まぐれ”だ…。たまたま、運が良かっただけだ…!」
ミスティ「気持ちは分かるが、君のやったことは許されることじゃない…!」
静かにユキに怒るミスティ。ユキも、そのことは十分に理解していた。
ユキ「リン…ちゃ…ん…!」
ユキ「私は、なんてことを…!」
ユキの目から涙が溢れ出す。
≪page24≫
次の瞬間、リンがユキの胸ぐらを掴む。
SE『パァンッ!!』
ユキの頬が、リンに思いっきりビンタされた。突然のことに目を丸くして、リンを見つめるユキ。
ユキ「えっ…!?」
≪page25≫
SE『パァンッ!!』
ユキ「ぶっ…!?」
2発目の往復ビンタ。ユキは訳が分からずただただリンに叩かれ続けている。他のみんなもポカンとしながらそれを見ている。
SE『パァンッ!!』
ユキ「いぎゃあっ!?」
3発目のビンタが決まった。ユキは思いっきり吹っ飛んでいた。
≪page26≫
リンは腰に手を当てながらユキを見下ろしている。
リン「3発よ」
ユキ「……え?」
リン「あんたがあたしを叩いた回数」
≪page27≫
リン「これでおあいこよ。…馬鹿ユキ!」
ユキに向け、ニカッと笑うリン。
ユキ「…!」
頬を押さえながら涙を流すユキ。
エレナは、涙を流していたモエを気遣い、優しく頭を撫でた。ミスティは、ユキとリンのやり取りに思わず吹き出していた。
ミスティ「ふ…」
ミスティ「おあいこなら、“仕方ない”か…」
≪page28≫
戦いが終わり、リンの自我が蘇った後、研究施設の外でしばしの間、4人で夜風を浴びて疲弊した身体を癒やす。
リン「……」
リン「……ごめん」
他の3人がリンの方へ静かに顔を向ける。
リン「みんな…あたしのせいで…。こんなに大怪我して…。たくさん酷い目にあって…」
ユキ「そんな…!」
≪page29≫
エレナ「リンは何も悪くない…」
エレナ「悪いのはロークと…」
エレナ「……私」
リン「何言ってるの…? あんたはただ、ロークに騙されて利用されただけで…」
モエ「…先輩たちの気持ちは、痛いほど分かるっす…」
≪page30≫
モエ「私も同じ立場だったら、絶対謝ってたし、罪悪感を抱いていたっすから…」
リン「モエちゃん…」
エレナ「モエ…」
ユキ「私とモエちゃんが保証する」
ユキ「リンちゃんとエレナは何も悪くない…」
それでも申し訳なさそうにするリンとエレナ。ユキは穏やかな表情を向ける。
≪page31≫
ユキ「……」
ユキ「私はみんなが大好き…」
ユキ「ずっと一緒にいたい…」
リン「あ…!?」
リン「あ…あんた…よくそんな恥ずかしいこと言えるわね…!?」
赤面するリン。咳払いをしつつ、ポツリと呟いた。
≪page32≫
リン「…でも、あたしも同じ」
モエとエレナも静かに頷いた。
月明かりが4人を優しく照らしていた。