ここはダグル迷宮地下一階層にある休憩施設。
 ここにはラクドサスが居て苛立っていた。

 「クソッ! エルは俺のことを信用していないのか!?」
 “それは違う。恐らく、これ以上お前を巻き込みたくないと思ってのことかもしれぬ”
 (そうだとしても……じゃあ、なんで兄弟の盃をかわした?)

 そう思いラクドサスは考える。

 “あの時は、それがベストだと思ったのだろう”
 (そうかもしれない……クッ、ここになんかいられない! 俺は追いかける)

 そう言うとラクドサスは休憩施設から出ようとした。

 “待つのじゃ、今グリモエステルスから連絡が入った”

 ラクドサスはそう言われ立ちどまる。

 (エルからの連絡か?)
 “伝言らしい、今グリモエステルスと繋ぐ”

 それを聞きラクドサスは分かったと言った。

 “ラクドサス、エルのことはすまん。あの場合はああするしかなかったのだ”
 (ええ、そうでしょうね。それで、エルの伝言ってなんですか?)
 “しばらくそこを動くな……時が来たら連絡する、だそうだよ”

 それを聞きラクドサスは思考を巡らせる。

 (何を考えている? 意味が分からん……)
 “もし分からないようなら、こう伝えてくれともね。ラクドサスは転移できるだろう、って”
 (おお、そういう事か。だが、ここでくすぶっているのもな)

 ラクドサスは不満そうだ。

 “君まで能力を使い果たしたら意味がないんじゃないかい”
 (そうだな……確かにそれがベストかもしれん)
 “そういう事だ。じゃあ交信を切る”

 そう言われラクドサスは頷いた。

 (ここで待てか……今は、それしかない。……悔しいがなっ!)

 そう思いラクドサスは悔しさのあまり部屋の壁を思いっきり殴る。
 そのため壁は一部が破壊され拳の跡がついた。
 ラクドサスは殴った方の拳をみる。……平気なのだろうか拳は血で真っ赤に染まっていた。

 (……素手で壁を殴るもんじゃないな。流石に……痛い)

 ただ単に我慢していただけのようだ。

 “当然だ。まあ、お前の気持ちは分かる。だが……今は堪えるのじゃ”
 (そうですね……)

 そう言いラクドサスは、ベッドの方へ向かった。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 ここは地下三階層。そして地下二階層とは明らかに違い緑に囲まれた場所である。

 「ここは、どうなっている? まるで森にでも居るようだ」
 “フムフム……この森、人口で造られたものみたいだね”

 そう言いグリモエステルスは、エルのバッグから出て宙に浮いた。その後、エルの周辺を飛び回っている。

 「出てきてもいいのか?」
 “今の儂は、ただの魔導書にしかみえんだろう”
 「そういう事か」

 エルはそう言いグリモエステルスを持った。

 “エル、しばらくの間……話す時は口に出さない方がいい”
 (そうだな……そうする。だけど、この森を……どう抜けるかだ)
 “考えている暇はないと思うのだが”

 そう言われエルは頷き真剣な顔になり眼前の森を見据える。
 そして、その後エルは気合いを入れたあと森へと駆けだした。