ここはミライゼル冒険者ギルド商会の建物内。
 受付のカウンターには、なぜかシルフィアがいた。

 あれからシルフィアは、ログスとララファを家に届けるとここにくる。

 そして現在シルフィアは、自分の担当受付嬢であるクルル・カロンと話をしていた。

「そうですねぇ……あの伝説のパーティーであるバッドスコーピオンが、この町に来ていると云う噂は聞いたことありません」
「そうなのね。やっぱり、気のせいだったのかしら……」
「そういえば、シルフィアさんの経歴にそのパーティー名が記載されていましたね」

 そう聞かれシルフィアは頷く。

「ええ、昔だけど……そのパーティーにいたから」
「なるほどですね。それで、会いたいってことでしょうか?」
「んー……そんなところかな。それで、もし何かそのパーティーの情報が入ったら教えてほしいのだけど」

 そうシルフィアが言うとクルルは、コクリと頷いた。
 それを確認するとシルフィアは、カウンターから離れ建物から外にでる。

 ∞✦∞✦∞✦∞

 ここはギルドの奥にあるマスターの部屋だ。
 そこにはエルとラクドサスの対戦をみていた男が居て、難しい表情で机上の書類をみている。

 この男は、ミライゼル冒険者ギルド商会ダバイ支部のマスターだ。
 名前は、カルオンス・ロゼマグル。年齢は、五十五歳である。

 書類を机上に置くとカルオンスは考え始めた。

(エル・ラルギエか。資料を一通りみたが……なるほど、アイツの子供とはな。しかし、セルギガの話では……焼けて村がなくなっていたと言っていた)

 そう思い机上の一点をみている。

(マルセも……駆け付けた時には死んでいたと。そのため魔剣バスターへルギアの所有者の権利を得たとも……。どういう事だ?
 その時にエルは居なかったのか……。それに昔、もらったマルセの手紙には……。
 エルムスが死んだから魔剣バスターへルギアの所有権は、自分になったと書いてあった)

 そう思考を巡らせながら席を立った。そして、窓の方を向くと外をみる。

(それに……その手紙には、子供が居るとは記載されてなかった。
 うむ……さっきエルの顔を確認した限り、エルムスに似ていたから書類に書いてあることは間違いないだろう。
 そうなると……どうなっている? なぜマルセは、エルの存在を隠したのだ。
 それだけじゃない、セルギガは……村に行ったのであればエルの存在に気付いたんじゃないのか?
 それと、まだある。エルがエルムスとマルセの子供なら、魔剣バスターへルギアの所有権を持っているはず。それが……)

 そうこう自問自答するもカルオンスは、余計に分からなくなってきた。そのため一旦、そのことを考えるのをやめる。

(考えても分からん。そうなるとエルかセルギガの、どっちかに聞いた方が早いか?
 んー……そういえば、この町にシルフィアもいた。確かエルのパーティーに居るはず。何か知っているかもしれんな)

 そう考えるとカルオンスは、部屋から出て受付の方へ向かった。