ここはダバイの町にある倉庫街。そして派手な建物が、隠れるように奥の方にあった。
 その建物内には酒場がある。そこには、チラホラと色んな種族の男女があちらこちらにいた。
 酒場の二階の奥に隠し部屋があり、そこには特別な者しか入れない。

 現在この場所には、なぜかダスカがいた。
 そしてダスカの目の前には、顔に大きな傷のある男がいる。その男は椅子に座り机上に肘をつき、ダスカを見据えていた。

 「なるほど……今までいたパーティーを抜けて俺たちの方に入りたい、と」
 「はい、前々からバッドスコーピオンの噂は聞いていました。かつて英雄が居たパーティーであり、未だにその強さは衰えてない。そのパーティーが、この町に来ていると聞き」
 「フッ、今は英雄は居ないがな。だが、それに匹敵するのは俺だ」

 そうこの顔に大きな傷がある男はセルギガ・バルメスと云い、現在の魔剣バスターへルギアの所有者である。という事は……そういう訳なのだ。

 「その噂も、勿論聞いております」
 「そうか……それで、なんでこの町で最強と云われているパーティーを抜けてまでこっちに移ろうと思った?」
 「それが……」

 ダスカはその理由をセルギガに話した。

 「……デスナイトメアキメラのリーダーが、タイマンで負けた。それも、この町に来て間もないヤツにか」
 「そうなんですよ。それで、このパーティーより強い所と思い」
 「なるほど、それで見限ったって訳か。まあ構わないが、そのお前の居たパーティーのリーダーを倒したヤツのことを聞かしてくれるか?」

 そう言われダスカは、エルのことを知っている限り話す。

 「おいっ! ソイツの名前、間違いなくエル・ラルギエと云うんだな?」

 凄い形相でセルギガは、ダスカに問い返した。

 「は、はい……間違いありません……です」

 余りにもセルギガの表情と言い方が怖くて、ダスカは震えている。

 「フッ、そうか……ラルギエ。その姓を名乗る者は、そんなにいないはずだ。もしそうだとして……」

 そう言うとセルギガは考え始めた。

 (エルムスとマルセに子供が居たことになる。あの時マルセは、そのことを言わなかった。だが、あの二人の子供じゃない可能性も……確認するか。……その方が早い)

 そう考えがまとまるとセルギガは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「ダスカと云ったか。すまんが、そのエルとか云うヤツをみたい。どこか感づかれず、みれる場所はあるか?」
 「ええ、あります。ですが、なぜそこまで興味をお持ちで?」
 「フンッ、お前には関係ないことだ……余計なことを聞くな」

 そう言いセルギガは、ダスカを睨んだ。

 「わ、分かりました!」
 「ああ、じゃあ案内してもらおうか」

 それを聞きダスカは、セルギガとこの部屋を出る。
 そしてセルギガは、ダスカの案内でその場所へと向かった。